この街は先に部屋を取って、部屋番号を伝えてから待つ形になる。慣れた手順のはずなのに、この日は入ったホテルがハズレだった。エアコンの効きが弱く、部屋に入って十分経っても汗が引かない。シャワーの水圧も細くて、頭を流すだけで妙に時間を食った。
NEW NEW(ニューニュー)は初めてじゃない。今回はパネルを見て指名している。写真は照明を落とした部屋で撮ったやわらかい一枚で、四十前後だろうと踏んで選んだ。年齢を重ねた女性の落ち着きを買いに来ている身としては、狙いそのものは外していないつもりだった。
顔の作りが写真と違う、という単純な話ではない。骨格そのものは整っている人だ。ただパネルの一枚は照明の勝利で、蛍光灯の下に立った実物とは別の印象になっていた。パネマジという言葉を久しぶりに頭に浮かべることになる。
「暗い方がいい?」とメリハリさんの方から聞いてくれたので、遠慮せずに枕元の間接照明だけ残した。これは正解で、光量を落とすとさっきまでの引っかかりが半分ほど消える。
問題は服を脱いでからだった。肉のついた体は嫌いじゃない。むしろ好きな方だ。ただ手入れをして丸くなった柔らかさと、単に張りを失った柔らかさは、触れば指で分かってしまう。腰まわりも太ももも、置いた指がそのまま沈んでいく。年齢の話ではなく、ケアの話としてそう感じた。
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手つき
浴室での洗いが雑だった。ボディソープを手のひらで泡立てないまま、直接肌にこすりつけてくる。ぬるぬるした感触だけは残るのに、洗われている実感がまるでない。
ベッドに戻ってからのキスも浅い。舌が同じ軌道を往復するだけで、事務的という言葉がそのまま当てはまる。手の力加減も最初から最後まで一定で、強めたり抜いたりの起伏がない。
口では二度ほど歯が当たった。痛いというほどじゃないが、その度に集中が切れる。物足りない、で片づけたくないので言い方を変えると、こっちの体を見ながら動かしている感じがしなかった。
途中で体勢を変えようとしたときも、そこは噛み合わなかった。こっちが動くのを待つ姿勢のまま、指示待ちのような間が空く。任せてくれるのと、任せきりにされるのは違うと思っている。
結果として、半分も硬くならないまま時間が進んでいく。最初は自分の歳のせいかとも疑った。ただ先月、同じくらいの時間帯に会った人ではちゃんと反応していたので、そこじゃない。
間の取り方
会話は成立する。日本語はたどたどしいが、こっちの言うことは通じるし、笑うところできちんと笑う。悪い人ではない。
ただ沈黙が来たとき、埋めるのがいつもこっち側だった。年齢を重ねた女性を選ぶ理由の大半は、この黙っていられる時間の心地よさにある。今回はそれが逆転していた。
「大丈夫?」と何度も聞かれたのもきつかった。気にしてくれているのは分かる。分かるが、反応しない側からすると急かされているようにしか受け取れない。包容力を求めて来た男が、途中から相手を気遣う側に回っている。
ひとつ良かったのは、煙草の匂いが一切しなかったこと。髪にも指にも残っていない。これは素直に助かった。
それでも80分ぶん最後まで付き合った
最終的に、自分から「もういいよ」と言って止めた。硬くならないものを無理やり触らせ続けるのは、お互いに時間の無駄でしかない。
残りは並んで座って喋って終わった。以前、似たような空振りを引いたときは早々に切り上げて帰ってもらったことがある。今回そうしなかったのは、この人が手を抜いたというより、そもそも噛み合わなかっただけに見えたからだ。
熟女好きを名乗っている以上、これだけは書いておきたい。年齢が理由じゃない。四十でも五十でも、体をきちんと手入れして、相手を見ながら手を動かす女性はいくらでもいる。今回足りなかったのは、そっち側だった。
金額を思えば安い買い物ではないし、ホテル代も別にかかっている。同じ額を出すなら、指名する前に写メ日記なり出勤の時間帯なりをもう少し見ておけばよかった。反省点があるとすればそこだ。
もう一度呼ぶかと聞かれたら、この人は呼ばない。ただ店ごと切るかというとそこまでではなくて、別の女性でもう一度だけ試すつもりでいる。
終電までまだ間があったので、駅前のマクドナルドでチーズバーガーを買って遅い飯にした。汗が引いてから食べた分がやたら旨くて、その日いちばん満たされたのがそれだったというのは、我ながら情けない。