金曜の夜、名駅のオフィスを出たのが十九時過ぎだった。そのまま在来線に飛び乗って豊橋まで運ばれていく。仕事帰りにこの距離を動くのは我ながらどうかと思ったけど、三日前に予約を入れてしまった以上、行かない理由もなかった。
豊橋まで電車に乗ったのは、この日が初めてだった
愛知県で遊ぶときは、だいたい名駅から歩いていける範囲で済ませてしまう。それが今回に限って一時間以上かけたのは、五十路マダム エクスプレス豊橋店(カサブランカグループ)の在籍表をスクロールしていて、戸澤おとという40歳の名前で指が止まったからだった。
公園のベンチに腰かけている一枚があって、顔ははっきり見えないのに姿勢だけがやたら綺麗だった。ピンクのロングスカートの落ち方と、背筋の伸び方。この二つで決めたようなものだ。
予約は写真指名で入れた。ここは枠が埋まるのが早いらしく、最初に狙っていた日はもう空いていなくて、結局三日ずらしている。デリヘルなので受付は電話とネットの両方があって、案内はホテルに直接という形。合流までの段取りはあっさりしていて、余計なやり取りがない分こちらは楽だった。
豊橋の駅前は、名古屋の繁華街みたいに看板がぎらついている感じではない。改札を出ると視界が広くて、二十時を回ると人の流れがすっと細くなる。派遣先は豊橋から豊川のあたりまで届くらしく、駅の近くで待ち合わせる分には移動で困ることはなかった。
ひとつだけ余計だったのは、乗る前に名駅の立ち食いでラーメンを流し込んだことで、電車のなかでずっと腹が重かった。この辺は毎回学習しない。
扉が開いた瞬間に、パネルの印象がひっくり返った
指定されたのは豊橋の駅から徒歩で行ける距離のホテルだった。部屋は正直狭い。テレビの前に立つと後ろを人が通れないくらいで、鞄の置き場所を探して少し焦った。
時間ちょうどにノックが鳴る。
「はじめまして、おとです」
扉の向こうに立っていたのは、写真から想像していたのとはだいぶ違う人だった。パネルのなかではクールで近寄りがたい美人という印象だったのに、実物は開口一番で笑っていて、気さくという言葉がそのまま当てはまる。この落差がまず良かった。
身長は158cmで、ヒールを脱ぐと目線がちょうど胸のあたりに来る。細すぎず、かといって重くもない。四十歳という数字を先に見ていたぶん、腕や首まわりの張りのほうに驚かされた。
六項目に点を付けるとこうなる。
ルックス ★★★★☆
スタイル ★★★★☆
おっぱい ★★★☆☆
アソコ ★★★★☆
感度 ★★★★☆
性格 ★★★★★
おっぱいだけ三つにしたのは、大きさで殴ってくるタイプではないという意味であって、形が悪いわけじゃない。座った姿勢のときの落ち方がむしろ自然で、そこは後半で書く。性格を満点にしたのは、こちらが黙っても間が持つ人だったから。
シャワーより先に、キスから始まった
服を脱ぐ前に、ソファに並んで座って世間話をした。天気の話と、豊橋の駅前が思っていたより静かだという話。そのあいだ彼女はずっとこちらの手を握っていて、気づいたら顔の距離がなくなっていた。
浴室へ行こうと腰を浮かせたところで袖を引かれて、そこから先はずっとキスだった。角度を変えながら何度も、途切れずに続く。本物の恋人と過ごしている錯覚、という言い回しを大げさだと思っていたけど、この日はその意味が分かった。
浴室でも同じで、洗いながらキスをして、髪を流しながらまたキスをする。
「ちょっと止まらないね」と笑われた。こっちの台詞だと思う。
背中を流しながら、この一週間の仕事の愚痴を少しだけ聞いてもらった。相槌のタイミングがうまい人で、こちらが黙った瞬間にちゃんと待ってくれる。風俗で癒されるという表現をこれまで信用していなかったけれど、この時間はそれに近かった。
ここから先、彼女がどこまで丁寧に責めてくるのか、どういう流れで終わったのかは限定エリアのほうに置いておく。指名するときのコツと、押さえるべき時間帯も一緒に書いた。
帰りの電車で考えていたこと
終電まで一時間近く余裕があったので、駅前のコンビニでコーヒーを買って少しだけ歩いた。
反省会。
ひっかかった点をひとつ挙げるなら力加減で、一箇所だけ強く握られる場面があって、そこは好みが分かれると思う。あとは自分の側の問題で、電車の時間を気にしながらの九十分は正直もったいなかった。パネルで期待値を上げすぎると裏切られる店が多いなかで、ここは逆方向に振れた珍しい例だったし、それを差し引いても満足度のほうが圧勝だったから、次に来るときは時間の使い方だけ先に決めておこうと思う。
また行くか。行く。次は平日の早い時間に押さえて、慌てずに済む形にしたい。やばいくらい良かった、の一言で片付けるのは雑だけど、実際そういう夜だった。