新横浜まで足を延ばした日のこと
普段の私は東京で遊んでいる。横浜市まで出るのは年に数えるほどで、たいていは仕事のついでだ。この日も市内の取引先で朝から打ち合わせがあり、解放されたのが金曜の夕方だった。外は雨が降っていて、傘を持たずに出てきたことを駅前で思い出した。会社に戻る気にはならず、コンビニでコーヒーを買って軒下で時刻表を眺めているうちに、今夜は帰らなくてもいいかという気分になってきた。人妻を看板に掲げた店を横浜市内で探し、そうして行き着いたのが人妻城横浜本店である。
決め手は、在籍表を眺めていて手が止まった女性が一人いたこと。それだけだ。
新横浜という街は、私のような出張者には都合がよい。駅から徒歩の範囲がビジネスホテルばかりで、遅い時間まで開いている飲食店もそこそこある。歓楽街めいた賑やかさがないかわりに、人目を気にせず部屋に入れる。土曜の昼から動く人にも向いた街だと言えよう。
この店はデリヘルなので、待合室に通されるようなことはない。こちらが先にホテルへ入り、部屋番号を伝えて待つ形になる。コースは八十分から百八十分まで幅があり、自宅へ呼ぶこともできるらしい。指名は写真と写メ日記を見て決める。私は日記の文面を三本ほど読んでから決めた。文章に無理な作り込みがないのが、かえって信用できた。指名料と交通費が別で乗る形なので、総額はコース表の数字より少し上がる。そのぶん、当日に使える割引をこちらから聞かなくても向こうから提示してくれるので、精算で嫌な思いをすることはなかった。
待っている間、部屋の空調が効きすぎていて少し寒い。リモコンを探して温度を上げたところで電話が鳴った。彼女本人からで、「あと十分ほどで着きます」と到着予定まで伝えてくれる。急に呼鈴を鳴らされるより、この一手間があるだけでこちらの気持ちが整う。段取りのできる人だと、この時点で分かった。
紗音という女性
扉が開いた十秒
ドアを開けると、リボンのついたアウターにミニスカート、白いハイソックス。黒髪が肩の下までまっすぐ落ちていて、二十五歳という数字がそのまま立っている。百五十七センチという背丈のわりに脚が長く、上着の上からでも胸の存在が分かる。ラフで可愛い、という言葉がいちばん近い。写真では清楚に寄せて写っているが、実物はもう少し元気がある。写真より実物のほうがいい、という言い方をされることが多いのも頷ける。
「はじめまして、紗音です」。声が思っていたより高い。
玄関先で靴を揃える所作が丁寧で、こういうところに人となりが出るものだと思う。上着を脱いだ彼女は、想像していたより細かった。細いのに胸だけがきちんとある体型で、Fカップという申告に嘘はない。
ソファに並んで座って
冷蔵庫からハイボールを二本出して、ソファに並んで座った。彼女もハイボールを飲むという。週に一、二回は飲むが普段はお茶か無糖の紅茶、と話す。趣味はカフェ巡りだそうで、横浜市内の店の名前がいくつも出てきた。私が知っている店は一つもなかった。
話し好きだと聞いていたが、こちらの話も笑顔で聞く。相槌の入れ方に間があって、聞いているふりではないと分かる。仕事の愚痴を少し話したら、そこから十五分ほど脱線して、気がつけばグラスが空になっていた。時計を見て慌てたのは私のほうだ。
「そろそろ、シャワー行きます?」
立ち上がるときに手を引かれた。この引き方が上手い。急かされている感じがなく、それでいて次の場面へ確実に移っている。ここから先をどう過ごしたかは、限定エリアに置くことにした。
感じたままの六項目を、順に置いておく。
ルックス ★★★★☆
スタイル ★★★★☆
おっぱい ★★★★★
アソコ ★★★★☆
感度 ★★★★★
性格 ★★★★★
部屋を出てから、帰りの電車で
百分は思っていたより早く終わった。着替えながらも会話が続いて、最後は玄関先でもう一度抱きしめられた。廊下へ出ていく後ろ姿を見送ってから、私はしばらく部屋に残っていた。すぐに動く気になれなかった、というのが正直なところだ。
惜しかったのは、終盤で私のほうが焦ってしまったことである。残り時間を気にして力加減を誤った場面があり、あそこはもう少し落ち着いてやればよかったと思っている。彼女は何も言わなかったが、こちらの雑さは伝わっていたはずだ。
帰りの電車で、次はもっと長いコースにしようと考えていた。
二十五歳という年齢だけを見て、若いだけの人だろうと決めつけていた自分が恥ずかしい。話していて楽しく、こちらの機嫌まで整えてくる。これは年齢では説明がつかない。部屋で何があったか、そしてその先の話と次に呼ぶときの段取りは、限定エリアに書いた。