金曜の夜、仕事が長引いて会社を出たのが21時過ぎであった。人と会う約束もなく、そのまま帰るには惜しい気分で、私は山手線に乗り換えて五反田で降りた。
この街で降りたのは、ずいぶん久しぶりであった。
五反田の坂を上る前に、少しだけ前置きを
五反田という街は、駅の東と西でまるきり表情が違う。西側は目黒川に向かって坂が続き、飲食店の看板が控えめに並んでいる。東側に回ると、急に夜の色が濃くなる。私はどちらかというと西側の落ち着いた空気のほうが性に合っていて、待ち合わせの前に一杯やるならこちら側と決めている。品川区の中でも、この駅の周りだけは時間の流れ方が違う気がする。
その夜に指名を入れたのが、東京都品川区に事務所を構えるE+(イープラス)品川店であった。五反田を拠点にしたデリヘルで、案内はホテルへの派遣が基本になる。レンタルルームへの派遣はしていないので、宿はこちらで押さえておく必要がある。この日は駅から徒歩数分の、少し古いが清潔な一軒を取った。
受付から案内までの流れは、拍子抜けするほど静かであった。スタッフの言葉遣いが丁寧で、到着の目安を先に知らせてくれるので、部屋でそわそわして過ごす時間が短くて済む。在籍はクラス制で分かれていて、指名料と交通費が別立てになる。そのぶんを頭に入れておかないと、当日になって少し焦ることになる。具体的な金額の話は限定の頁のほうに回す。
システムそのものは分かりやすい。写真を見て決めるのが基本で、気に入れば次から本指名に切り替えられる。私のように月に一度あるかないかの頻度でも、同じ相手を追いかけやすい造りになっている。逆に言えば、人気の子ほど枠の取り合いになるということでもある。
ひとつだけ文句を言うなら、その日の部屋が暑かった。空調の効きが悪く、私は先にシャワーを浴びて汗を流してから待つはめになった。これは店の落ち度ではない。私のホテル選びが雑だっただけである。ただ、五反田は駅前に古い宿と新しい宿が入り混じっていて、値段だけで選ぶと当たり外れが出る。次に来るときは西側の坂の上まで足を延ばそうと決めた。ここまでが前置きで、店の話は全体の三割にも満たない。以降は彼女の話である。
扉が開いた瞬間、私は一呼吸置き損ねた
写真より柔らかい顔立ちと、私服の趣味
あさという女性である。二十五歳。パネルの印象は綺麗系で、正直なところ少し近寄りがたい空気すらあった。ところが実物には、そこに愛嬌が乗っている。目が合った瞬間に笑うので、こちらの構えが一拍で崩れた。「お待たせしました」と言いながら靴を揃える所作が妙に丁寧で、その時点でもう好感を持ってしまっていた。
私服はキャップにTシャツ、下は膝丈のスカート。飾り気はないのに野暮ったくならないのは、自分に似合うものを知っている人の着方だ。色白で、細さの中に運動を続けている人特有の張りがある。週に二度はジムへ通っていると聞いて納得した。腰から下のラインは本人も自負しているようで、私もそこは同意する。シルクのような肌触り、という手垢のついた比喩をつい使いたくなった。もっとも、こういう書き方をすると鼻につくのは自分でも分かっている。要するに、写真の何倍も綺麗で、そのうえ写真より人懐こい、という話である。パネルを見て身構えていた分だけ、落差が効いた。
他愛のない十分で、距離は勝手に縮む
座って最初の十分は、ほとんど雑談であった。前職は企業の受付だったという。「クールに見られるんですけど、話し出すと止まらないって言われます」と笑うので、なるほどと思った。神奈川の出身で、ジャスミン茶が好きらしい。私が差し入れに買っていったのがコンビニのほうじ茶だったので、そこは見事に外した。
やばい、と胸中で呟いたのはこのあたりである。
四十を過ぎた男の言うことではないのだが。
会話が途切れない相手というのは、それだけで時間の密度が変わる。笑い声が大きくなりすぎて、隣の部屋に聞こえていないかと一度だけ気になったほどだ。夜の街で数をこなしてきた人間の言うことではないかもしれないが、私はこの十分だけで元が取れたと思っている。
私なりの評価を並べておく。★の付け方は、あくまで私の物差しである。
ルックス ★★★★★
スタイル ★★★★★
おっぱい ★★★★☆
アソコ ★★★★☆
感度 ★★★★☆
性格 ★★★★★
続きは限定の頁に譲る
ここから先、シャワーを終えてベッドに移ってからの時間については、誰でも読める場所に書くのは野暮であろう。ひとつだけ触れておくと、彼女は受け身一辺倒の人ではない。こちらが主導権を握っているつもりでいると、いつの間にか立場が入れ替わっている。その切り替わりの瞬間に浮かぶ表情が、この日いちばんの収穫であった。
当日どのくらいの費用になったか、どの枠が取りやすかったか、そして部屋で何がどこまで進んだのかは、投稿者限定の頁にまとめてある。
帰りの山手線で考えていたこと
部屋を出るとき、彼女は廊下まで出て手を振っていた。
営業の所作としてそれをやる人は多いが、この人のそれは顔まで笑っていた。
そういえば、部屋を出る直前に「またジャスミン茶の話しましょうね」と念を押された。次に行くときの手土産はもう決まったようなものである。
帰り道、駅前でラーメンを一杯すすりながら、次はいつ空きが出るだろうかと考えていた。人気があるらしく、出勤表の枠はすぐ埋まる。裏を返す価値のある相手であったと言えよう。