金曜の終電を捨てた夜
八月の新宿は、日が落ちても暑い。会社を出たのが二十二時過ぎで、いつもなら大人しく電車に乗って帰る時間である。
ただこの日は、前から気になっていた一軒があった。ロボットデリヘルという、名前だけ聞けば悪ふざけに近い店だ。四十を過ぎた男が今さらロボットごっこか、と自分でも思う。思いながら、指は勝手に予約フォームを叩いていた。
終電はあきらめた。
二時間、彼女は人間をやめていた
ドアの外に立っていた18歳
押さえたのは歌舞伎町寄りの、決して広くはないホテルだった。ベッドと壁の隙間が狭い。選び直せばよかったと少し悔いたが、二十三時を回っていて空きがなかったのだから仕方がない。
チャイムが鳴って、ドアを開ける。廊下の灯りを背にして立っていたのは、写真よりもさらに幼い顔立ちの子であった。165cmと聞いていたが、ヒールを脱ぐと目線はずっと下にある。細い首、白い腕。腰から下だけが妙に女で、そのちぐはぐさに一瞬言葉が出なかった。
「本日は納品にまいりました」と、真顔で言う。設定に忠実である。髪からは、夏の夕立の後に近い匂いがした。
ルックス ★★★★★
スタイル ★★★★☆
おっぱい ★★★★☆
アソコ ★★★★☆
感度 ★★★★★
性格 ★★★★★
起動から、最後の一滴まで
シャワーは彼女が先に浴びた。出てきたところを背中から抱く。肌はまだ乾ききっておらず、手のひらが吸い付いた。絹に近い、と書くと安っぽいが、ほかに言いようのない手触りであった。
首筋に唇を当てた瞬間、腕の中でびくりと跳ねた。性感帯は全身だと本人が言っていたが、誇張ではないらしい。耳の裏、鎖骨、脇の下と順に触れていくと、そのたび呼吸が短く切れる。ロボットの設定はどこへ行った、と笑うと「センサーが過敏です」と返してきた。この切り返しの速さは、十八という数字からは出てこない。
ベッドに倒してから、手の力加減だけは最初やや強かった。指が急ぎすぎている。二度ほど「もう少しゆっくり」と伝えると、そこから先はこちらの呼吸に合わせてきた。修正が効く子である。
下着を取ると、内側はもうぬるぬるで、太ももの内側まで伝っていた。指を一本沈めるだけで腰が浮く。締まりは十八の子らしくきつめで、動かすたびに中がビクビクと反応する。「やばい、こわれちゃう」と言いながら、脚は閉じるどころか開いていった。
口の使い方も達者だ。奉仕系だと自称するだけあって、こちらが何も言わないうちに下へ下りていく。喉の奥まで迎え入れて、そこで止まったまま上目を寄越す。苦しいはずなのに、目だけが笑っている。あれは技術というより性格の問題だろう。
途中でリモコンを渡された。この店の看板である、いわゆる操縦の遊びだ。ボタンを押すと動きが止まり、押し直すと再び動き出す。ばかばかしい。ばかばかしいのだが、止まったまま指先だけが震えている十八歳を眺めていると、こちらの理性のほうが先に焼き切れた。
ゴムの話は、結局一度も出なかった。
正面から重ねて、そのまま生で沈めた。入り口で一度止めて顔を見たが、目を閉じて頷いただけだった。中は熱く、締め付けの強い場所と緩む場所が奥行きで違う。動くたびに彼女の踵が私の腰の後ろで組まれ、逃げ場が消えていく。
「そのまま、中で」
そう言われて抗える四十代がいるなら、顔を見てみたいものだ。抜かずに、最後まで中で出した。NNである。終わったあと、彼女はしばらく私の上で動かず、二人分の汗が冷えるまでそこにいた。
そのあとのお掃除まで、当然の手順として口でやってくれる。ここまでが一連の動作として組み込まれているらしい。ぬるぬるのまま放り出されないのは、地味だが大きい。
電源を落としたあとの十分
片付けを終えて服を着てからの十分ほど、彼女は人間に戻って喋った。アニメの話である。私はほとんど分からないので聞き役に回ったが、好きなものを語るときの早口は、さっきまでの無表情と別人であった。
帰り際に時計を見て焦った。終電はとうにない。エレベーターまで見送ってもらい、コンビニで水を買って歩きながら飲んだ。そういえば、その足で〆のラーメンまで食べている。四十代の胃には重い選択だった。
私がまた新宿へ向かう理由
十八でこの完成度は、この店の当たり枠と言えよう。設定に本気で乗ってくれる子は少ない。乗った上で、途中から設定を忘れるほど感じてしまうのだから、こちらは持っていかれる。
指名料の分は迷わず払う価値があった。次は時間を長めに取り、部屋も広いところを押さえる。狭い部屋で遊ぶには惜しい相手である。
この子の名前と、彼女に辿り着くための道筋は、この先の有料エリアに記しておく。