山中温泉まで車を走らせた土曜
金沢を出たのが土曜の午後三時すぎだったな。八月の北陸は暑い日が続いていて、エアコンを効かせていてもフロントガラス越しの日差しで右腕だけがじりじり焼ける。北陸道を小松で降りて、そこからは下道をだらだら走った。カーナビが二世代くらい古いせいで一度道に迷いかけ、田んぼの真ん中で切り返す羽目になった。加賀は何度も来ているのに、山中温泉のほうまで上がるのは久しぶりだ。
十七時の予約に対して、着いたのは十六時四十分。
温泉街の駐車場に車を入れて、コンビニで冷たいほうじ茶を買い、飲みながら坂を上がった。金沢の片町とはぜんぜん違う。客引きの声もないし、路面から音楽が漏れてくることもない。聞こえるのは川の音と、宿の浴衣で歩いている客の下駄の音だけだな。北陸の夜はどこもこういう静かさだと思われがちだが、片町はもっと雑然としている。同じ県内でも別の国みたいなものかね。
ストロベリーハートは、その坂の途中にある。看板は思っていたより小さくて、一度通り過ぎてから戻った。派手な電飾も、通りに向かって並んだパネルもない。言われなければ普通の建物として通り過ぎる作りだな。この街でそれ以外の見た目にしたら浮くというのもあるんだろう。
そういえば、行きの車で聴いていたラジオが加賀の花火大会の告知をやっていて、ちょうどその週末だったと気づいたのは帰ってからだった。道理で温泉宿がどこも埋まっていたわけだ。日帰りで来た自分にはあまり関係のない話だが、泊まれるものなら泊まりたかった。
薫子という人 — ストロベリーハート
待合の椅子から見えた横顔
受付の対応は事務的すぎず、かといって馴れ馴れしくもない。名前を言うと、確認して、そのまま待合に通された。待合室は狭い。ソファが二つと、雑誌が数冊。先客がひとりいて、お互い目を合わせないようにお茶を飲んでいる時間が地味に長い。ここだけはどこの店に行っても好きになれないな。
スタッフの人が「薫子、準備が整いましたので」と声をかけてきたとき、立ち上がるのが一拍遅れて少し焦った。心の準備というのは案外できていないものだ。
廊下の突き当たりに立っていたのが薫子だった。
三十九歳と聞いていたから、正直なところ年相応の疲れみたいなものは出ているだろうと思っていた。それがない。髪をゆるくまとめて、白っぽい薄手のものを羽織って、こちらを見つけて笑う。まじで写真より本人のほうがいい。パネルより実物が上に来る人は、この商売だとそう多くないかね。
T161という数字のわりに脚が長く見えるのは、たぶん姿勢の問題だ。細いのに骨っぽさがない。
手を引かれたときの体温
「遠かったでしょう」と手を取られて、そのまま階段を上がった。手が温かい。冷房の効いた待合で冷えきっていた自分の指が、握られている側だけ先に戻っていくのがわかる。
部屋に入ると、川の音がまだ少し聞こえていた。窓を細く開けてあるらしい。彼女が閉めに行って、閉めきる直前に「これ、聞こえていたほうがいい?」と振り返って聞いてきた。聞こえていたほうがいい、と答えたら、指一本ぶんだけ開けたまま戻ってくる。
こういう細かいやりとりを、たぶん毎回やっている人なんだと思う。手を抜くところがない。ただ、そのぶん最初の十分くらいは間合いが読めなくて、こっちが黙ってしまった。向こうから話題を出してもらうまで天気の話しかできなかったのは、こちらの落ち度だな。
座って話しはじめると、旅行の話が出てきた。どこそこの景色がよかった、という話をするときの目の動きが本物で、営業で言っているのではないのがわかる。前職が医療関係だったという話も聞いた。話の運びに変な間がないのは、そのあたりの経験もあるのかもしれない。
六項目の採点
ルックス ★★★★☆ — 写真より本人が上。目元が涼しい
スタイル ★★★★☆ — 細いが骨っぽくない。数字どおりの体型
おっぱい ★★★☆☆ — 大きさより形。仰向けでも流れない
アソコ ★★★☆☆ — 可もなく不可もなく、という言い方が一番近い
感度 ★★★☆☆ — 受け派だと聞いていたが、反応そのものは控えめなほう
性格 ★★★★★ — ここが本体。二時間いても疲れる瞬間がない
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湯を落として、体を洗ってもらって、そこから二時間。洗い場と部屋を行ったり来たりする形で、途中でマッサージまで入った。ぶっちゃけ、この商売でマッサージに唸らされたのは初めてだな。
ただ、どこまでが店の決めた流れで、どこからが彼女の裁量なのか。その線引きの話は無料で読めるところに書くものじゃない。ゴムの扱いも含めて、この日どういう二時間になったのかは、登録した人だけが読めるほうに置いておく。
ひとつだけ先に書いておくと、この二時間は派手さで押してくる時間ではない。テクニックの見本市を期待して山を上がってくると、たぶん肩透かしを食らう。そういう遊び方をしたいなら片町にもっと向いた店がある。ここに来る意味は別のところにあるな。
帰りは街道沿いでラーメンを食って、金沢に戻ったのが二十二時前。運転しながら、また来るかね、と自分に聞いて、たぶん来るな、と答えた。往復三時間かけて食う夜食にしては、悪くない土曜だった。