朝六時、まだ帰る気になれなかった
土曜の朝六時。夜勤が明けて倉庫を出たら、雨だった。傘は持っていない。
眠いのに寝られない、というのがいちばん厄介だ。家に帰っても布団の上で天井を見て終わる。始発で帰るつもりが、乗り換えの途中でコンビニに寄って肉まんを買い、気づいたら歌舞伎町のほうへ歩いていた。自分でも何をしているんだろうと思いながら歩いていた。夜勤明けの体は、だいたいこういう判断をする。
この時間に受付が生きている店は、そう多くない。
ギンギラ東京は朝でもつながった。名前だけは前から知っていて、入るのは初めて。電話に出た男性スタッフは眠そうな声だったが、こっちも眠いので文句はない。九十分で頼んだつもりが、折り返しの電話で六十分に変わっていた。女の子の都合です、と言われた。まあ、朝だし、と流した。ここで粘らなかったのが後で効いてくる。
ギンギラ東京で名前を挙げたのがTSUKIだった
写メ日記だけを見て決めた。それが失敗だった。
部屋に入ってきたTSUKIは、日記の顔と別人に見えた。少し面長で、目つきはキツネっぽい。ギャルの感じもお姉さんの感じもしない。どちらかというとダウナー系で、部屋でゲームばかりしていそうな顔つきだった。悪い顔ではない。ただ、日記の一枚で全部決めた自分が悪い。指名前にもう少し調べておけばよかったと、部屋に入られた三秒で思った。
脱いだあとの体は、腹まわりに油断があった。ただ触るともちっとしていて、これは嫌いじゃない。胸はお椀型で垂れていない。ここだけは写真のままだった、というより写真より良かった。
六項目でつけるとこうなる。
ルックス ★★☆☆☆
スタイル ★★☆☆☆
おっぱい ★★★★☆
アソコ ★★★☆☆
感度 ★★★☆☆
性格 ★★★☆☆
話し方は落ち着いていて、業界が長いのは会話の端々でわかる。前に別のところで長くやっていた、という話も出た。だからこそ、この後の展開が読めてしまった。
六十分のはずだった四十五分
シャワーは一緒に入った。背中に湯をかけながら、TSUKIが壁の時計を見たのがわかった。
「時間押してるから、先に流しちゃおうね」
入室したのが二十分過ぎで、枠は六十分。あ、これは削られるやつだ、と思った。
ベッドに上がってキス。してくれるのだが、口は閉じたままだった。舌は出てこない。二回試して、三回目はやめた。嫌なんだろうな、というのは伝わってくるので、そこを押すつもりはない。ただ、キスから入って温度を上げていく流れを想定していた身としては、最初の足場を外された感じになる。
そこからフェラ、と思ったら来なかった。一度も。
代わりに枕元のローションを取って、いきなり手コキが始まった。手つきは慣れている。ぬるぬるの中で握りの強さを変えてくるので、気持ちよさ自体はある。ただ、力加減が最初から最後まで同じテンポで、途中から作業の音を聞いている気分になった。事務的、という言葉がいちばん近い。目も合わない。
良かったのは胸だ。
寝かされて上から挟まれると、こっちの視界から本当に消える。潰して当てるのではなく、下から持ち上げて圧を逃がさないようにしてくるので、重さがそのまま乗ってくる。ねっとりしたローションと合わさって、ここだけで一度終わってもいいかと思ったくらいには効いた。パイズリだけを目的に来る客がいるのも納得する。
手を下に伸ばすと、もう濡れていた。指を入れると腰がビクビクと動いて、声も出る。演技かどうかは判断できない。ただ反応は返ってくるし、しばらく続けたら軽く潮が飛んだ。シーツに落ちた音でこっちが驚いていたら、TSUKIが「まじで出ちゃった、ごめん」と笑った。この瞬間だけは、人としゃべっている感じがあった。
そのあと、お伺いがあった。そこから先の展開はここには書かない。限定エリアのほうに全部置いておく。
問題はそこではなくて、終わって時計を見たら、枠がまだ十五分残っているはずの時間なのにもう服を渡されていたことだ。実質四十五分。急かされていたのは気のせいではなかった。九十分で取ったつもりが六十分にされ、その六十分もこれか、と考えると、行為の中身とは別のところで物足りなさが残る。
帰り際、TSUKIは「またね」と言った。悪気はないんだと思う。ただ、夜勤明けの体が欲しかったのは、時間を計られない四十五分ではなかった。
始発が動き出したあとの独り言
外に出たら雨は上がっていて、路地が明るくなり始めていた。
結局、眠気は取れていない。急かされたぶんだけ変な緊張が残って、駅前で朝からやっているラーメン屋に入り、替え玉までして、電車で寝た。この時間帯にこういう店へ寄るのは体を休めるためであって、他人の上がり時間に合わせるためではない。
胸に関しては文句なしだった。そこだけは繰り返しておく。
お伺いの結末と、料金・予約・狙う時間帯の実務メモ、次に指名するならどうするかは限定エリアにまとめた。夜勤仲間は読んでくれ。