一年ぶりに橋塚ビルの階段を上った
俺はタクシーの運転手をやってる。歌舞伎町の周りは毎晩流してるから、看板だけは嫌でも覚えるんだよ。東京都新宿区の区役所通りから一本入ったところに橋塚ビルってのがあって、その二階から四階までがドン ファンだ。この辺は雑居ビルが密集してて、初めて来たやつは入口で迷う。俺も最初のときはビルの前を二往復して、結局コンビニの角で立ち止まって看板を数え直した。二階から四階までを一軒で使ってる店はこの通りでも多くないから、慣れれば目印になる。
朝の歌舞伎町は、夜とは別の街になる。前の晩の紙くずを掃除機みたいな機械で吸ってる作業員と、コンビニの袋を提げて帰るホストがすれ違うくらいで、人通りは少ない。この時間にこの辺を流しても客はつかまらないから、俺は普段なら車庫に帰る。
行ったのは八月の木曜、夜勤明けの朝だった。前の晩に乗せた客から聞いた話だと、ここの朝イチは意外と静かでゆっくりできるらしい。蒸し暑くて寝る気にもならなかったし、車を車庫に返してそのまま歩いた。ソープが朝八時から開いてるのを、どれだけの人が知ってるだろうな。
受付から部屋に呼ばれるまで
入口は狭いが、受付のスタッフの対応は丁寧だったわ。名前を伝えて先に料金を払い、待合に座って呼ばれるのを待つ形になる。指名は写真から選ぶ方式で、人気の子は出勤の枠がすぐ埋まる。俺は前の週に出勤表を眺めて目星をつけておいた。総額表示で六万七千円からという価格帯だから、初見だと少し身構える。
待合は二人掛けのソファが二つあるだけ。先客がいると立って待つことになる。この日は俺ひとりだったんで、備え付けの雑誌をめくって十分ほど潰した。
結論から言えば、当たりだった。
ありすは写真より小柄だった
呼ばれて顔を上げたら、想像してたよりずいぶん小柄な子が立っていた。この商売、写真があてにならないことのほうが多いが、この子は逆なんだよ。実物のほうが綺麗だった。黒髪で、肌が白くてもちもちしてて、笑うと目が細くなる。
身長は俺の肩より下だ。数字で言えば百五十四センチらしいが、立ち姿の細さのせいでもっと小さく見える。手も小さい。
「はじめまして、ありすです」と言われて、俺は「うわ、写真より…」と言いかけて止めた。言い慣れないことを言うと、だいたい滑る。
写真の印象と実物がずれる子は珍しくないが、ずれ方が下ではなく上に出る子は久しぶりだった。清楚系と言われるのが分かる顔立ちで、それでいて視線を外さない。目を合わせたまま笑うのは、慣れてないとできない芸当だ。
部屋に向かうまでの短い時間も、会話が途切れなかった。台湾に行ってみたいという話から、俺が昔乗せた客が空港で騒いだ話になって、そこからアニメの話に流れた。「レ・ミゼラブルが好きなんです」と言われたときは、正直どう返すか迷った。無言になる隙がまったくない。二十歳でこの回し方は、たいしたもんだと思う。
俺の採点
ルックス ★★★★★
スタイル ★★★★☆
おっぱい ★★★★☆
アソコ ★★★★☆
感度 ★★★★☆
性格 ★★★★★
手をつないで階段を上るところから
迎えに来た時点で、当たり前みたいに手を握ってきた。そのまま階段を上って部屋まで歩く。これがまじで効く。ソープに来てるはずなのに、待ち合わせした相手と並んで歩いてる感覚になるんだよ。ドアが閉まった瞬間に空気が変わるんだが、そこから先は無料で置いておくには惜しい。
部屋は思ったより広かった。窓はないが、湯気で曇らないように換気がよく効いていて、夏に来ても息苦しくならない。備品はひと通り揃ってるし、掃除も行き届いてる。古いビルだから設備の年季は隠せないが、手入れでちゃんと埋めてる感じだ。
文句をつけるとしたら時間帯だ。出勤が朝八時から十五時までで固定されていて、深夜はまず捕まらない。俺みたいな夜勤明けには都合がいいが、仕事終わりに寄りたい客には厳しいだろうな。終電逃した時に思い出しても、この子はもう帰ってる。
帰りの車の中で考えたこと
疲れが抜けていた。
そういえば会計のとき、スタッフが「またお待ちしてます」と言って傘を貸そうとしてきた。降ってもいないのにだ。前の客と取り違えたんだろうが、こういう抜けたところがあるほうが、俺はかえって気が楽なんだよ。
店を出たら日が高くて、目をやられた。大久保通りまで歩いて牛丼屋で朝飯を食って、それから寝た。九十分があっという間だったわ。金額を思えば安くはないが、時間の密度で言えば釣りが来る。
部屋の中で何がどうなったのか、次に取るならどの枠か、予約をどう入れたら早いか。そのへんは投稿者限定のエリアに全部書いた。