関内で拾った客が置いていった店の名前
金曜の深夜、伊勢佐木町のはずれで酔っぱらいを降ろして、そのまま空車で関内駅のほうへ流していた。この辺は日付が変わると、歩いてる人よりタクシーのほうが多くなる。客待ちの列に並ぶのも面倒で、俺はだいたい流しっぱなしにしてる。
その手前の信号待ちで、後ろに乗せてた客がぽろっと店の名前を言ったんだよ。奥鉄オクテツ神奈川店(デリヘル市場)。人妻系のデリヘルで、関内から曙町、伊勢佐木町のあたりに女の子を送ってくれるところだ。
「あそこ、当たる日と外す日の差がでかいんですよ」って笑ってた。当たる日の話まで聞かされたら、そりゃ行くに決まってるわな。
俺の車庫は横浜市の内陸のほうにあって、上がってから関内まで戻るのは正直めんどくさい。それでも三日後、非番の日にわざわざ電車で出てきた。
受付から部屋に入るまでの段取り
デリヘルだから、店に行って待合で女の子を眺める、みたいな造りじゃない。事務所がどこにあるかは客には見えないし、こっちがやることは部屋を決めて連絡を入れるだけなんだよ。
この店は写真から指名するのがふつうに通る。ページに女の子が並んでいて、そこから名前を指定する形だ。指定せずにお任せで頼むこともできるが、俺みたいに顔で選びたい人間には向いてない。
ホテルは伊勢佐木町から曙町にかけて固まっていて、駅からなら歩ける距離だ。土地勘がなければ聞けば教えてくれる。応対はやたら丁寧で、こっちが何度目かも詮索せず淡々と進めてくれた。あの温度感は嫌いじゃない。夜の商売で一番差が出るのは、実は女の子より電話に出る人間の方だと俺は思ってる。ここは少なくとも、初めての客を試すような喋り方はしてこなかった。
部屋に入って十分ちょっとで、ドアがノックされた。出発したって連絡は先に入ってたから、俺はもうシャワーを済ませて座って待ってた。
入ってきたのが、はるかという人だった
ドアを開けた瞬間、思わず「え、ページの写真より若いな」と声が出た。
48歳と書いてある。
書いてあるが、その数字を信じろというほうが無理なんだよ。
顔立ちがはっきりしていて、目鼻がきちんと並んでいる。昔の女優みたいな作りの顔で、髪はちょい巻きのストレート。色は白い。ホテルの安っぽい照明の下で肌が濁らない人って、たまにいるけどそう多くはない。
T163でFカップ。数字だけ並べると派手に聞こえるが、本人は派手さより品のほうが先に立つ。それでいて色っぽい。この組み合わせは狙って作れるもんじゃないと思う。
座って喋り始めてすぐ分かったのは、この人、頭がいい。こっちが振った話にちゃんと返ってくるし、間の取り方がうまい。仕草もいちいち可愛らしくて、上着をたたむだけの動きでこっちが黙る。
「運転手さんって、夜の街のことなんでも知ってそう」と言われて、知ってますけど全部は話せないですよ、と返したら本気で笑ってた。この掛け合いだけで十分もつ人だ。休みの日は読書して過ごすらしくて、そのへんの落ち着きが喋り方に出てる。俺が今まで乗せてきた客で言うと、酔って絡んでくるタイプの真逆にいる人だと思ってもらえばいい。
いいことばかりでもない。部屋が狭かったし、エアコンの効きが悪くて暑い。それに距離がゼロになる遊び方だから、その日のコンディションがそのまま出る。当たり外れが出るのはたぶんここで、俺の日も途中で一瞬だけ気になった間があった。まあ、こっちも人のこと言えた立場じゃないから黙ってたわ。
俺なりの六項目
ルックス ★★★★★
スタイル ★★★★☆
おっぱい ★★★★☆
アソコ ★★★☆☆
感度 ★★★★☆
性格 ★★★★★
顔と中身が振り切ってる。
逆に言うと、そこ目当てで行かないと点がぶれる人なんだよ。技巧を売りにしてる子と同じ物差しで測ると、たぶん噛み合わない。
あの晩の入口のところだけ
シャワーから戻ってタオル一枚で隣に座られた時点で、段取りとかどうでもよくなった。
キスが好きだと自分から言うだけあって、始まりがそこからだった。ねっとり長い。こっちが息を継ごうとすると、また寄ってくる。
そこから先は書けない。
書くと店にも本人にも迷惑がかかる種類の話なんだよ。だから続きと、俺が結局いくら置いてきたかは限定エリアのほうに置いておく。
もう一度呼ぶかどうか
呼ぶ。迷いもしない。
というか、帰りの電車の中でもう次の出勤日を数えてた自分がやばい。
そういえば帰りに高架下のラーメン屋へ寄ったんだが、味を全然覚えてない。それくらい頭が別のところにあった。
この店は出勤の日が多い人ばかりじゃないから、狙いを決めたら早めに動いたほうがいい。俺は一回、確認をサボって丸一週間ずらす羽目になって焦った。
終電逃した時に泊まるだけの街だと思ってた関内が、あの日からちょっと違って見えるようになったわ。