福富町へ向かった夜
八月の金曜、仕事を早めに切り上げて電車で関内まで出た。ホームに降りた瞬間から空気が湿っていて、シャツの背中が張り付くくらい暑い。駅前のコンビニで冷たいお茶を買って、飲みながら福富町のほうへ歩いた。
目当ては横浜 ソープランド AAA トリプルエー。前から気になっていた高級店で、この日のためにわざわざ予定を空けていた。
ところが看板の並びが似ていて、あっさり道に迷った。予約の時間まであと五分というところで焦った。結局、一本裏の通りに入り口があって、情けない話だけど同じ角を二回曲がっている。近くに駐車場もあるので車で来る人も多いらしいが、初回なら歩きのほうが分かりやすいと思う。
待合室は個室になっていて、通されるとエアコンがよく効いていた。出されたコーヒーを飲みながら十分ほど待つ。ソープはやっぱり、この待ち時間の作りで店の格が出るって感じだった。
スタッフの対応も丁寧で、混み具合によって開始が前後することを先に説明してくれた。こういうところを隠さない店は信用できる。トイレも喫煙所も自由に行けるので、待っている間に余計な気を使う場面がない。
ひとつだけ言うと、部屋によっては前の客の紙タバコの臭いがうっすら残っていることがある。吸わない身にはそこが残念だった。
きあを指名するまで
パネルを順に眺めていて、手が止まったのがきあだった。顔にぼかしが入っているのに、姿勢と脚のラインだけで「この人だ」と思わせてくる写真。二十代後半、158cmのスレンダー体型。数字だけ見て細すぎるかと構えていたけれど、一階まで迎えに来てくれた本人は写真より生身のほうが良かった。歩き方が静かで、廊下を進む数歩で完全に持っていかれている。
「はじめまして、きあです」
階段を上がりながらの第一声がやたら柔らかくて、こっちの緊張がほどけていく。前職が美容部員だと後で聞いて、それは納得だった。肌も爪も髪も、手入れの行き届き方が近くで見ると分かる。
部屋に入ってから話し始めると、これが完全に天然だった。その日の話題は台風の進路で、「明日は横浜も降るらしいですよ、傘持ってます?」と真顔で聞かれて、いや今から風呂に入るんだけどって笑うしかない。営業のトークではなく、素で会話しに来ている人だった。こういう子は久しぶりだ。
そういえば、浴衣を着た日の話を振ったら急に嬉しそうになった。和装が似合う人はだいたい所作がきれいだ。
点数をつけるならこうなる
ルックス ★★★★★
スタイル ★★★★★
おっぱい ★★★☆☆
アソコ ★★★★☆
感度 ★★★★☆
性格 ★★★★★
おっぱいだけ三つにしたのは単純にサイズの話で、形は文句なし。細い体に対してはちゃんとあるので、貧相さは全然ない。胸で選ぶ人には向かないけれど、脚とくびれで選ぶ人には満点だと思う。
性格を満点にしたのは、話しているときの天然さとプレイ中の表情の落差がはっきりしているから。会話の彼女しか知らないと、たぶん後半で驚くことになる。
湯気の向こうで
浴室に入って、まず泡の感触が良かった。市販のボディソープとは明らかに違うものを使っていて、手のひらで転がされるとぬるぬる滑って力が抜けていく。ただ最初の一分だけは力加減が強めで、そこは伝えたらすぐ合わせてくれた。伝えれば直るというのは、技術がある人の証拠だと思っている。
洗体は背中から始まって、肩甲骨のあたりを両手で挟むように滑らせてくる。そこから腕、脇腹、腰と順に降りていって、正面に回るまでにたっぷり時間をかける。急がないのに、どこも飛ばさない。高級店の洗体はここが違うと毎回思っている。泡を足しながら手のひらの向きを変えているのは、たぶん本人は無意識だ。
こっちはずっと黙っていた。
やばい、これは当たりだ。
浴槽は広くはない。二人で向かい合えるぎりぎりで、狭いと言えば狭い。ただこの距離感は嫌いじゃなかった。
洗い場から湯船まで、流れがまったく途切れない。こっちが次に何をすればいいか考える隙がない。入浴料込みで110分のコースにしていたのに、体感では半分くらいしか経っていなかった。
時間の感覚がなくなる。
で、ここから先が無料で書ける範囲を超える。
ベッドに移ってからの彼女は、待合室で台風の話をしていた人と同じとは思えなかった。まじで別人だった。表情の作り方と声の出し方が、こっちの反応を見ながら一段ずつ変わっていく。上手いというより、観察されているって感じ。
帰りは同じ道を歩いて駅へ戻った。夜になっても蒸し暑さは変わらないのに、頭の中だけやけに涼しい。駅前でラーメンでも食べて帰ろうかと一瞬考えたが、その気にはならなかった。余韻を薄めたくなかったんだと思う。改札を抜けるまで、さっきまでの時間を頭の中で二回くらい再生していた。
この日どこまでどうなったか、料金と予約のコツ、それから彼女がいちばん得意なところは、限定エリアのほうに全部書いた。