痴漢する側で予約したはずだった
木曜の夜、仕事が長引いて新大久保に着いたのは21時過ぎだった。蒸し暑い日で、駅前の人混みを抜けるだけで背中が汗ばむ。ここは車内で痴漢をするところから始まるコンセプトの店で、つまり本来なら、仕掛けるのはこちら側になる。
受付で設定の説明を受けて、車両を模した部屋に先に入る。そこへ彼女が乗り込んでくる、という段取りだった。M寄りの自覚がある人間がわざわざS側の枠を選んだのは、たまには逆をやってみようと思ったからだ。
結論から言えば、その前提は三十分ももたなかった。
向かいに立った瞬間から読まれていた
細身で色白、髪はまっすぐ肩の下まで伸びている。24歳と聞いていたが、立ち姿の落ち着きはもう少し上に見えた。設定上は他人同士なので、最初は目も合わせない。吊り革を掴んだまま、揺れに合わせて距離だけが少しずつ縮まる。
こちらが手を伸ばすかどうか迷っている数秒。そこを完全に見透かされていた。視線がすっと下がって、また上がってくる。許可が出た、と感じた。実際には何も言われていない。
この瞬間が堪らない。
触り始めても、彼女は前を向いたままだった。声を殺す演技が上手いというより、殺しきらない加減が上手い。息だけが乱れて、肩がビクビク動く。ここで一度、こちらの手のほうが止まった。
車両を降りたあとの一時間
主導権が移った合図
設定を抜けてベッドに移ってから、おかしいと気づいた。反応が大きくなるタイミングを、彼女のほうが選んでいる。強く触れば引き、緩めればこちらへ寄ってくる。合わせているようでいて、実際は誘導されていた。気づいた時点で引き返せたのだろうか。
焦った。
部屋は狭い。ベッドとシャワーの間に人ひとりぶんの隙間しかなくて、動くたびに肩がぶつかる。その窮屈さが逃げ場のなさとして効いてくるのは、正直まったく想定していなかった。キスが長い。息を継ぐ間隔がこちらに合っていない。合わせるしかない。
手が止まった瞬間に、彼女の手が動き出した。順番が入れ替わったのはたぶんそこだ。支配される快感というのは、荒っぽいものではなくて、こういう静かな入れ替わりから始まるのかもしれない。
「もう、そっちが我慢できてないよね」
その一言で、こちらの役は終わった。
身を委ねると決めてから
抵抗をやめた。あとは全部任せることにした。
上に乗られて、腰の動きだけで持っていかれる。素股が得意だと本人が書いているだけあって、擦り方に迷いがない。角度を変える判断も早くて、こちらが息を詰めた瞬間には次の形になっている。ぬるぬるした感触が途切れないまま、声を出すたびに速度が少しだけ変わった。
……もう、ダメだ。
そう思った回数を数えるのは途中でやめた。終わってからも身体が勝手にビクビクしていて、それを笑いながら見られているのが、いちばんきつかった。
ただ、序盤の力加減だけは少し物足りなかった。丁寧すぎたというか、最初の五分はこちらの様子を見すぎていた気がする。慣れてからは一切気にならなくなったので、単に立ち上がりが遅いタイプなのだろう。
ぶっちゃけ、この手のコンセプト店は設定が空回りして終わることも多い。ここは違った。痴漢電車という枠組みが、途中から「委ねる側に回るための言い訳」としてちゃんと機能していた。
最後に身体を洗ってもらった。そのときの手つきがいちばん優しかったのは、たぶん計算だと思う。
新大久保の路地でまだ引きずっていた
帰りに駅前でラーメンを食べた。汗をかいたあとに熱いものを入れるのはどうかと自分でも思ったが、頭がまともに働いていなかった。そういえば、コンビニで水を買うつもりだったのも忘れていた。
山手線に乗ってから、ようやく順番に思い出せた。痛みの向こう側に何かがある、という言い方を普段はするけれど、今回は痛みの話ではなかった。ただ主導権を渡して、それを気持ちいいと感じただけだ。やばい、と小さく声が出た。まじで、こういう帰り道は久しぶりだった。
ルックス ★★★★☆
スタイル ★★★★☆
おっぱい ★★★★☆
アソコ ★★★★☆
感度 ★★★★☆
性格 ★★★★☆
引っかかったのは店側だけ。予約の電話が少し素っ気なくて、温度がなかった。来店してからのスタッフは普通に丁寧だったので、電話番との相性なのかもしれない。
この子の名前と、指名するときの組み立て方は限定エリアに置いておく。同じ側に回ってみたい人へ。