委ねるつもりで行った夜
八月の頭、平日の昼。有休が一日だけ余っていたのを思い出して、朝いちで予約の電話を入れた。普段はM性感かSMクラブに行くことが多くて、ソープはたまにしか使わない。
理由は単純だった。ソープの女の子はサービスとして受けに回ることが多いから、こちらが身を委ねる余地が少ないと思い込んでいた。
その先入観は、この日に真正面から壊された。
吉原まではいつも鶯谷から送迎に乗る。この日の車内はクーラーが効きすぎていて、汗が引くまでの数分がやたら長かった。運転手さんは無言でずっと道路を見ている。こっちも何も喋らない。あの沈黙、嫌いじゃない。ただ待合は平日の昼なのに埋まっていて、呼ばれるまで二十分近く座っていた。人気店の宿命なのかもしれないが、気持ちを作る時間としては少し長すぎた。
静かに主導権を握る子だった
部屋に入ってきたのは、二十一歳とは思えないくらい落ち着いた子だった。声はふわっと軽くて、笑うと目が細くなる。癒し系という言葉で片付けられそうな空気なのに、視線だけがやけに強い。
こういう子が一番怖い。
押してくるタイプのS嬢より、静かに間合いを詰めてくる子のほうが厄介で、気づいたときには逃げ道が塞がっている。163cmでGカップという数字は事前に知っていたけれど、実際に抱きしめると数字より体温のほうが記憶に残った。胸は柔らかいというより、もちっと吸い付いてくる質感。
「今日はどんなふうにされたいですか」
最初にそう聞かれた時点で、もう主導権はこちらにない。答えを用意していなかったので、正直に「攻められるほうが好きです」と言った。彼女は少し笑って、「じゃあ何もしなくていいですね」と返してきた。この一言で背骨が緩んだ気がする。
ルックス ★★★★☆
スタイル ★★★★★
おっぱい ★★★★★
アソコ ★★★★☆
感度 ★★★★★
性格 ★★★★★
支配される時間の記録
主導権を奪われるまで
洗い場のやりとりが、すでに攻防だった。こちらから手を伸ばすと、手首を軽く押さえられて「まだです」と止められる。声を荒げるわけでもなく、笑ったまま制止してくる。この温度差が効く。
得意なのはフェザータッチだと聞いていたが、想像していたものと質が違った。脇腹、内もも、首筋。触れるか触れないかの距離を指がずっと往復していて、そのくせ肝心なところには一度も来ない。焦らされるのは好きなはずなのに、五分でもう膝が笑っていた。
マットは使わず、洗い場からベッドまでずっと素手だった。泡で滑らせながら耳の後ろを舐められた時点で、こちらの計画はもう成立していない。攻めるつもりで来た人間が一番簡単に崩れるのを、彼女はたぶん経験で知っている。
途中、乳首をつままれたときの力加減だけは噛み合わなかった。こちらの反応より少し強くて、一瞬だけ現実に引き戻された感じ。ただ、そこからの修正が早い。二回目には明らかに弱くなっていて、三回目には痛みと快感がちょうど半々のところに置かれていた。この観察力は、二十一歳が持っていていい武器ではない。
「我慢できてえらいですね」
そう言われた瞬間、背中に鳥肌が立った。支配される快感というのは、たぶん行為そのものより、相手が自分の状態を全部把握しているとわかった瞬間に来る。この瞬間が堪らない。
痛みの向こう側に落ちた
ベッドに移ってから、手つきがはっきり変わった。ローションを足してぬるっと滑らせながら、ねっとりと時間をかけて追い込んでくる。口に含まれたときの締め付けが妙に的確で、二回戦用に休ませるつもりだった予定が完全に崩れた。
やばい、と声に出したと思う。
そのまま生のまま繋がった。ゴムを外す流れが自然すぎて、意識したのは入ってからだった。中に出していいのかを目で聞いたら、頷いて腰を引き寄せてきた。判断はこちらに残されていない。痛みの向こう側に、こういう明け渡し方があるのかと思った。
出している間、内側がビクンと跳ねて、彼女のほうが先に声を崩していた。「すごい、熱い」と言われて、こっちの理性が完全に落ちた。…もう、ダメだ。全部持っていかれた感覚だけが残った。
終わったあと、しばらく胸に頭を乗せたまま何も喋らなかった。二十一歳に敗北宣言をしている四十手前の男というのは、客観的には相当みっともないと思う。それでも、身を委ねる時間としては今年いちばんだった。
ひとつ書いておくと、この日は木曜で出勤も昼からの日だった。夜の指名が埋まりやすい子なので、平日の早い時間に入れたのは結果的に正解だったと思う。
帰りは送迎を断って、土手沿いを歩いた。雨が降りそうで降らない、蒸した夕方。途中の中華屋で餃子とビールをやりながら、次はいつ休みが取れるかを本気で計算していた。ソープは受けに回る場所だという思い込みは、もう捨てた。
ちなみに送迎は帰りも出してもらえるので、遠方から来る人はそこも計算に入れていい。使わなかったのはこっちの都合だ。
この子の名前と、彼女に会える場所は有料エリアに書いた。同じ快楽を求める者だけ読んでほしい。