火曜の夜だった。
昼過ぎから降っていた雨が、仕事を終えて駅に着くころにはようやく上がっていて、本厚木の北口のロータリーには濡れたアスファルトの匂いだけが残っていた。バスを待つ人の傘の先から、まだぽたぽたと水が落ちている。九月も終わりかけなのに風はぬるくて、上着を持ってきたことを少し後悔した。
雨が上がった本厚木で、ひとつ遅い晩飯を
予約は前日の夜に入れていた。熟女の風俗最終章 厚木店。名前だけ聞くと身構えるけど、この店に来るのは初めてじゃない。ただ、今夜の相手は初めてだった。
写真の彼女は、ピンクのニットのワンピースで椅子に浅く腰かけていた。顔にはぼかしが入っているのに、肩の力の抜け方と膝の揃え方だけで、なんとなく声の感じまで想像がつく。そういう写真だった。日記には「キスが好き」とあって、文章の端々がやけにのんびりしている。決めたのはそこだった。
ホテルに入る前に、駅の南側のラーメン屋に寄った。背脂の浮いた醤油で、カウンターは狭いし隣の客の肘がずっと当たる。正直、落ち着いて食べられる店じゃない。それでも雨の日にはここの湯気が恋しくなる。スープを半分残して、ティッシュで口を拭いて、コンビニでお茶とミントのタブレットを買った。
ホテルまでは徒歩で十分ほど。国道の車の音が、濡れた路面のせいでいつもより長く尾を引いていた。
部屋に着いて店に電話を入れると、受付の男性の声がやけに明るかった。「二十分ほどで伺いますね」。その明るさに少し救われる。初めての子を待つ時間は、何度経験しても慣れない。テレビをつけて、消して、またつけた。窓の外では、看板のネオンが濡れたガラスに滲んで、赤い帯みたいに揺れていた。
ピンクの服で、少し重そうな鞄を提げて
ドアの隙間から見えたもの
チャイムが鳴って、開けた先に立っていたのは、思っていたよりずっと小さな人だった。
写真と同じピンク系の服。肩に掛けた鞄が体に比べて大きくて、それだけで少し笑ってしまう。「こんばんは、すみれです。雨、止みました?」。第一声がそれだった。止んだよ、と答えると、「よかったぁ、髪がうねるんですよ」と前髪を指でつまんでみせる。
肌が白い。部屋の黄色っぽい照明の下でも、首すじのあたりだけ一段明るく見えた。顔立ちは幼いのに、目元に落ち着いた影があって、話し出すと年上の人と話しているような安心感がある。見た目は妹で、中身はお姉さん。そのちぐはぐさが、不思議と居心地がよかった。
鞄の中から出てきたのは、ペットボトルのお茶だった。「これ、よかったら」。自分もコンビニで同じものを買っていたので、テーブルに同じラベルが二本並んだ。二人で顔を見合わせて、少し笑った。
指先で知ったこと
シャワーの前に、ソファで並んで座った。彼女は自分から膝をこちらに向けて、腕に軽く手を置いてくる。遠慮のない触れ方なのに、押しつけがましさがない。
手の甲に触れた指が、しっとり温かかった。抱き寄せると、腕の中にちょうど収まる。細いのに骨ばっていなくて、背中から腰にかけてがもちもちと柔らかい。胸は服の上からでもわかるくらい大きいのに、体全体は小さい。そのバランスが、抱いてみるといちばんよくわかる。
お風呂では、泡を立てながらずっとしゃべっていた。地元の話、最近ハマっている入浴剤の話、駅前の再開発の話。「あのビル、結局なにが入るんですかね」。知らない、と言うと「ですよね」と笑う。会話が途切れる隙がない。といっても、無理につないでいる感じはまったくなかった。
湯船の中で後ろから抱えると、彼女は首だけ振り向いて、ほんの少しだけ唇を寄せてきた。まだ始まってもいないのに、この夜はきっと長く覚えている気がした。
灯りを落とす手前で、いったん筆を置く
ベッドに移ると、彼女の空気がふっと変わった。
さっきまでのおっとりした話し方はそのままに、キスだけが深くなる。唇の動きがねっとりとゆっくりで、急かされることがない。フェザータッチでなぞると体が小さく震えて、「そこ、弱いの」と息だけで言った。
口でしてくれる時間が長かった。小さな口で、丁寧に、時間をかけて。上手い、という言葉では足りないけど、ほかにうまい言い方も見つからない。マジで、ここまでとは思っていなかった。
ただ、その先の時間には、良いところと、こちらが汗をかく場面の両方があった。そこまで含めて書かないと、この夜のことを正直に書いたことにならない。
この先の、灯りを落としてからのことは限定エリアに書いておく。
ルックス:★★★★☆ スタイル:★★★★☆ おっぱい:★★★★☆
アソコ:★★★☆☆ 感度:★★★☆☆ 性格:★★★★★
性格だけは、迷わず満点にした。
ドアが閉まってから
帰り際、彼女は玄関で靴を履きながら「優しくしてくれて、ありがとう」と言った。それ、こっちの台詞じゃないか。
ドアが閉まると、部屋には石鹸の匂いと、飲みかけのお茶が二本残った。片方には、彼女の口紅がうっすら付いていた。
外に出ると、雨はもうすっかり上がっていた。国道沿いの歩道を駅のほうへ歩きながら、次の出勤日をスマホで確認している自分に気づいて、少し笑った。