坂の途中で灯りを数えた
木曜の夜だった。仕事が長引いて、五反田の駅を出たときには21時を回っていた。
東口のガード下から居酒屋の声が漏れている。目黒川へ下っていく坂は、雨のあとみたいに黒く光っていた。実際には降っていない。散水車が通っただけだと、坂を下りきってから気づいた。品川区のこのあたりは、そういう嘘みたいな光り方をする街だ。
東京都のなかでも五反田という土地は、駅から歩いて数分の範囲に灯りが密集している。ホテルの看板も、コンビニの白い光も、同じ坂の上下に並んでいる。S級素人清楚系デリヘル chloe はこの一帯を派遣の中心にしている店で、こちらが店舗に顔を出すことはない。部屋を先に確保して、部屋番号を伝えて、あとは待つ。受付カウンターも待合室もない代わりに、待つ場所は自分で決めることになる。
指名は写真から選ぶ形になっている。サイトに並んだ顔を眺めて、この子だ、と思ったら名前を伝えるだけ。フリーで入って店側のおすすめに委ねる遊び方もあるらしいが、この日は駅に着く前から決まっていた。
部屋は駅寄りの安いところにした。ベッドと洗面台の間が人ひとりぶんしかない、正直に言えば狭い部屋だ。エアコンの効きも悪くて、夏の終わりだというのにまだ暑い。テレビを消して、カーテンの隙間から漏れてくる看板の赤を眺めながら待った。
ドアが開くまでの三秒
目に入った順番
ノックは小さかった。ドアを開けて最初に視界へ入ってきたのは、顔ではなく肩の高さだった。
168cm。数字としては知っていたけれど、実際に目の前へ立たれると、こちらの視線がわずかに持ち上がる。その差が妙に落ち着かない。黒髪が胸の下まで流れていて、白いシャツにグレーのスカートという、街ですれ違ったら振り返って終わりそうな格好をしていた。手足が長い。腰の位置が高い。19歳という数字が嘘に見えないくらい、輪郭がまだ柔らかかった。
「初めまして、まみです」
思ったより低い声で、語尾だけ少し上がる。緊張しているのが分かる話し方だった。正直、やばいと思った。パネルで見ていたときより、実物のほうが一歩こちら側に立っている感じがする。
荷物を置く仕草も、ハンガーにシャツを掛ける手つきも、まだ慣れていない。慣れていないことを隠そうともしない。その不器用さのほうが、作り込まれた所作より何倍も強い。こちらが緊張をほぐす側に回っているうちに、部屋の空気がゆっくり温まっていった。
触れて分かったこと
シャワーを浴びて、ベッドの端に並んで座った。最初のキスの入りは、少しぎこちなかった。角度を探しているのが伝わってくる。
ただ、唇が柔らかい。これは本当に柔らかかった。触れて、離れて、また触れる。そのたびに背中の奥のほうを持っていかれる感覚があって、何度目かで角度が合ってからは、彼女のほうが止まらなくなった。首筋に指を滑らせると肩がビクビクと跳ねる。感じているのを隠す気がないというより、隠し方をまだ知らないという反応だった。
手のひらが少し冷たかった。「エアコン強すぎませんか」と笑って、そのまま毛布を引き寄せてくる。距離の詰め方が上手いのではなく、単に自然なのだと思う。
肌が近い。それだけの話なのに、しばらく何も喋れなかった。
六つの目盛り
ルックス ★★★★★ パネルより実物が強い
スタイル ★★★★★ 168cmの線がとにかく細い
おっぱい ★★★☆☆ 大きくはない。形はきれい
アソコ ★★★★☆ ここは伏せておきたい
感度 ★★★★★ 触れるたびに跳ねていた
性格 ★★★★★ 笑い方に嘘がなかった
灯りを落としてから先のこと
ここから先は、書く場所を変える。
ベッドの上で何が起きたのか、彼女がどこで声を変えたのか、こちらがどこで負けたのか。順番も長さも覚えている。ただ、それを全部この明るい場所に並べてしまうと、あの夜がただの記録になってしまう気がした。だから残りは限定エリアに置いておく。時間の使い方も、支払った金額の感覚も、次に指名するならどの時間帯を選ぶかも、そちらに書いた。
ドアが閉まったあと
帰り道、坂を上り直した。
そういえば夕飯を食べていなかったと気づいて、駅前のラーメン屋に入った。カウンターの端で丼を抱えながら、さっきまで隣にあった体温のことを考えていた。タクシーを拾ってもよかったのに、結局は電車で帰った。窓に映る自分の顔が、来たときより少しだけ間抜けに見えた。
一期一会のつもりで会いに行って、また会いたいと思いながら帰る。毎回そうなるわけではない。この夜は、そうなった。