浴衣の似合う四十三歳に会いに、三ノ輪まで歩いた
八月末の平日、午前十時前。日比谷線の三ノ輪で地上に上がった瞬間に首筋が汗ばんだ。今年の夏はしつこい。土手通りをだらだら歩いて、吉原の一角にあるグッドワイフまで十分ちょっと。台東区のこのあたりは朝だと人の気配が薄い。
東京のソープの中でも、この店は人妻と熟女に振り切っている。若い子には興味がないので、こちらとしてはむしろ探す手間が省けてありがたい。
朝いちで正解だった。
入り口は小ぶりだが、中の内装はきれいに手が入っていた。受付はメガネの男性スタッフで、愛想がよく、初めてでも言葉に詰まらない。先に料金を払うとリクエストシートを渡される。呼ばれたい呼び名としてほしいことを書くと、そのまま女性側に共有される仕組みだ。「今のソープはこれが基本なんですかね」と聞いたら、「うちは書いてもらったほうが、女の子も動きやすいんですよ」と笑われた。欄は大きくないので三つくらいに絞るのがいい。
もう少しだけ待たされたい気もした。
待合で待つのは十分か、長くても二十分。番号を呼ばれたら女性と一緒に部屋へ上がる。指名は本指名とネット指名の両方があって、今回は写真と写メ日記を散々眺めた上での指名だった。
料金は総額で14,800円から。条件によって15,800円まで。ソープでこの数字はかなり安い部類で、正直、最初は何かしら削られているんじゃないかと身構えていた。
この店は週末になるとかなり混む。自分の日も、受付で別店舗への移動をお願いされている人がいた。ボーイさんが歩いて案内してくれるので放り出されはしないが、時間を取られるのが嫌なら平日の朝だ。
冬木さんを三つの角度から見てみる
目もとに出る色香
階段の途中で、浴衣の女性が笑って立っていた。紺地に白い花が散った柄で、真夏の朝に見るとやたら涼しげだ。足元は下駄。イベント期間だったらしく、こちらから頼んだわけでもないのに出迎えがその姿だった。
綺麗な人だ。
四十三歳。顔立ちは彫りが深くて、失礼ながらハーフなのかと思った。写メ日記では顔を出していないので、実物を見るまでどんな人か半分は想像だったのだが、想像していた方向とは違う種類の綺麗さだった。大人の色気ってのは、肌の張りとかそういう話じゃなくて、目のあたりの落ち着きに出る。冬木さんはまさにそれで、こちらが緊張しているのを一瞬で見抜いた上で、何も言わずに手を取ってくれた。声も低めで、耳に残る。階段を上がりきるまでの十数秒、こちらは何も気の利いたことを言えずに黙っていたのだが、その沈黙をまったく気にしていない様子だった。若い子だとここで無理に喋ろうとして空回りすることがある。そういう間の取り方ひとつで、こっちの肩の力が抜けていく。
手つきの丁寧さ
部屋に入ってすぐ、浴衣はこちらが脱がせた。帯のところで手間取っていたら「そこ、引っぱっちゃっていいですよ」と笑われた。逆に脱がせてもらうときの手つきも、まったく急がない。言葉遣いも所作も、全部が一段ゆっくりしている。
手が速くない。
洗い場でも同じだった。首と肩を、やたら時間をかけて洗われる。ソープに通ってそれなりの年数になるが、あの洗われ方は初めてだ。年齢を重ねた女性ならではの、手順が体に入っている感じがある。ひとつだけ言うと、肩を洗うときの力加減はもう少し強くてもよかった。そこは口に出して頼めばよかったと帰ってから思った。
抱きしめられたときの安心感
アシスト脱衣のとき、正面から抱き止められた。やばい、と声が出た。Jカップという数字より、もちもちして体温が高いことのほうが効く。むちむちという言葉がこれ以上ないほど似合う体つきで、骨っぽさが一切ない。
参った。
前の仕事は介護だったと話していた。なるほどな、と思った。人の体の扱いが上手いのも、こちらの様子を見ながら喋る速度を変えてくるのも、そのへんから来ているんだろう。包容力が違うというのは、こういうことを言うんだと思う。タバコは吸わないし、タトゥーもない。趣味は料理で、甘いものに目がないらしい。山梨の出身だという話から、こちらが去年ぶどう狩りに行った話に流れて、勝沼のどのあたりがうまいという話でひとしきり盛り上がった。裸で向かい合ったままする会話ではないのだが、そういう時間がまったく無駄に感じない相手というのは、そう多くない。
六項目の採点
ルックス ★★★★☆
スタイル ★★★★☆
おっぱい ★★★★★
アソコ ★★★☆☆
感度 ★★★★☆
性格 ★★★★★
洗い場から先のこと
ここからが本題だ。
泡洗いから浴槽に移って、そこでしばらくいちゃいちゃしていた。湯の中で密着したまま、ぬるぬるした手がゆっくり動く。ここから先は無料で書ける範囲を超える。
リクエストシートに書いた三つの要望も、全部そのまま通った。何を書いて、どう叶えられたのか。それと予約を取るときのコツ、狙うべき時間帯は限定エリアのほうに置いておく。
大人の女性が好きな人へ
結論は出ている。
ぶっちゃけ不満もある。部屋の空調が弱くて暑い。八月の朝で外も蒸していたせいもあるが、汗が引かないまま最後までいってしまった。洗い場も二人で入るとやや狭くて、体の向きを変えるたびに肘がどこかに当たる。あと、終わったあとにマッサージまでしてくれたのは素直にありがたかった一方で、そのぶん本編の余韻に浸る時間が押した。贅沢な文句だとは分かっている。
それでも、また来る。
帰りは日本堤の交差点まで戻って、開いたばかりの立ち食いそば屋で冷やしたぬきを食べた。朝からソープに行ってそのまま蕎麦をすすっている四十代の男というのは我ながらどうかと思うが、こういう時間の使い方ができるのが平日休みの特権だ。日比谷線のホームに降りたら通勤ラッシュはとっくに終わっていて、座席が半分空いていた。冷房の効いた車内でさっきまでの八十分を反芻していたら、隣に座った作業着の人にちらっと見られた。たぶんにやけていたんだと思う。
若い子にはない魅力を探している人には、この人を勧める。数字だけ見て四十三歳かと引く人がいるなら、それはもったいないんだよな。