前に一度だけ使ったことのある店に電話を入れる。出たのは女性のスタッフで、新しく入った子がいますと勧められた。年齢を聞いたら若い数字が返ってきたので、その時点では気乗りしなかった。三十を超えた女性しか指名しないと決めて、もう何年も経っている。
ドアを開けた瞬間は、正直に書くと落胆した。写真で見たときのきらきらした感じがどこにもない。表情に生気がなくて、目線も合わない。部屋に入ってからも荷物を置いたまま突っ立っていて、これはチェンジも考えるかと頭の隅で計算を始めていた。
顔立ちも肌も、どう見てもその数字ではない。落ち着きの出かたが違う。目尻の柔らかさも、指の動かし方も、三十を少し過ぎたあたりの人のそれだった。年齢を重ねた女性ならではの間合いというやつが、立っているだけで出ている。
お茶を挟んで十分ほど喋った。喋ったといっても日本語はほとんど通じないので、翻訳アプリを二人で覗き込みながらの会話になる。向こうではエンジニアをしていたらしい。画面に出てきた職種の単語が思ったより硬くて、思わず「え、そっち系なの」と声が出た。
そのうち表情がほどけてきた。最初の生気のなさは、単なる人見知りだったらしい。笑うと目が細くなって、こっちの腕を叩いて笑う。人が変わったというより、そこでやっと本人が出てきた感じだ。
大人の色気ってのは、喋っているときより黙っているときに出る。翻訳の結果が出るまでの数秒、彼女がこっちの顔をただ見ている時間があって、その目つきがやたらと落ち着いていた。若い子はあの数秒を持て余す。
服を脱ぐと、体は写真より細かった。肩も腰も薄い。胸は手のひらに収まる大きさで、乳首は小さくて色が濃い。腹は平らで、腰のくびれだけが不自然なくらい深く入っている。手足も尻も小さい。ただ肌は少し乾いていて、腕をなでると指に引っかかった。そこは惜しい。
イメージ画像(AI生成)
テクニックは口のほうが上だった
ベッドに座って、まずキス。これが最初ぎこちなかった。唇を合わせても口を開けてくれないし、舌を入れようとすると顔を引く。拒んでいるというより、やり方を知らない様子だった。
一度離れて、ゆっくりやってみせた。上唇だけ、下唇だけ、軽く吸って離す。二回目からは同じことを返してきた。三回目にはもう向こうのほうが深く来る。覚えが早い。
そこから先はキスが止まらなくなった。浅く入れて、抜いて、また深く。強弱の付け方まで途中から彼女が握り始めた。
乳首を舐められた。舌の当て方が丁寧で、爪を立てずに指を添えてくる。そのまま下がっていって、そのまま口に含まれた。ここが一番良かった。玉のほうから舐め上げて、裏を下から上へ、横から咥えて、深く飲み込んで長く往復する。四つくらいのやり方を順番を変えながら回してくる。ちゅぱ、と音を鳴らす箇所と、無音でねっとりやる箇所を使い分けていた。
途中で歯が軽く当たった。深く咥えたときに二回ほど。痛いというほどではないが、そこだけは慣れの問題だと思う。
一度危なかった。長い往復に切り替わった瞬間に腰が浮いて、「ちょっと待った」と口に出して止めてもらった。情けない話だが、あのまま続けられていたら終わっていた。
包容力は待てる時間のことを言う
こっちからも攻めた。耳の裏から始めて、首、鎖骨、脇、腕の内側、指の一本ずつ、腹、腿の内側、膝の裏、足の指まで。触るたびにビクン、と体が跳ねる。感度は素直だ。
小さい乳首を舐めて吸うと、すぐ固くなった。声は抑えているのに漏れてしまう感じで、これが妙に色っぽい。
向かい合わせで舐め合う形が好きらしく、こっちの頭を腿で挟んでくる。舌が当たるたびに腰が浮いて、口に押し付けてくる。ぬるぬるになるまで時間はかからなかった。
で、懐の深さの話だ。この人は途中で一度も急がなかった。こっちが息を整えている間、黙って胸に手を置いて待っている。言葉が通じない相手にペースを預けるのは本来やりにくいはずなのに、まったくそう感じない。若い子にはない魅力というのは、たぶんこの待てる時間のことを指している。
落胆から始まって、離してもらえないまま終わった
ここから先が今日の中心だ。
ゴムが要る店だ。事前に分かっていたし、そこに文句はない。ただ渡されたのが極端に薄いやつで、これを付けるとなぜか毎回こっちの調子が落ちる。案の定、装着している最中に萎えかけた。四十を過ぎるとこういうことが起きる。
イメージ画像(AI生成)
情けない顔をしていたんだと思う。彼女が黙って手を添えてきて、こっちの目を見て小さく笑った。急かさない。それで戻った。
正常位で入れた。入り口で一度引っかかる。
狭い。想定していたより二段階くらい狭かった。押し込むというより、ねじ込んで通す感覚に近い。奥へ進む途中で薄い膜を破ったみたいな引っかかりがあって、そこを越えた瞬間に一気に締まってきた。
ゴム越しでこれか、と思った。一枚あってなお輪郭が全部分かる。角度を変えるたびに当たる場所が変わって、そのたびに向こうの声が変わる。
「あっ、そこ」みたいな短い単語だけは日本語で出る。覚えたのか、たまたま似た音なのかは分からない。
体位は変えなかった。変える必要がなかったと書いたほうが正しい。顔が見える形のまま、深さと速さだけ動かした。ゆっくり奥まで入れて止めると、内側が勝手に動いて締めてくる。速くすると腰を上げて合わせてくる。
途中から彼女が背中に腕を回して、離さなくなった。首筋に顔を埋めて、キスをせがんでくる。キスをしながら腰を動かすと、締まりがまた一段変わる。
顔が歪むのが良かった。眉が寄って、口が半開きになって、それでもこっちから目を逸らさない。
たまらん。
最後は抱きしめられたまま持っていかれた。抜いたあとも腕がほどけなくて、しばらくそのままだった。
二人でシャワーを浴びて、備え付けのバスローブを着てベッドに戻った。ここからが長い。ぴったりくっついて離れない。翻訳アプリを挟んで、ボウリングのスコアの話とか、日本の夏は湿気がひどいという文句とか、どうでもいい話を延々した。
いつまでこの仕事を続けるのかと聞いたら、分からない、と返ってきた。この手の店は入れ替わりが早い。次に来たときにいるかどうかは本当に読めない。
帰り際に何度もハグをして、ドアの前でもう一回キスをした。
ドアを開けた瞬間に感じた落胆は、跡形もなく消えていた。
結論を書く。ルックスで選ぶ店ではない。写真の印象は当てにならないし、最初の五分で判断すると損をする。この人の価値は、お茶を一杯飲んだあとから出てくる。
ゴム着用が前提なので、そこを最優先にする人には向かない。それでも締まりだけで押し切ってくるタイプなので、ゴムの有無で満足度が決まらない人には十分すぎる。
帰りに駅前の立ち食いそばを食って、そのまま終電で帰った。次に上野の飲みが流れたら、また同じ番号にかけると思う。
この人の名前とお店は、登録者限定エリアで公開している。