Chloe錦糸町店で、主導権をどちらが持つかを試した
八月最後の水曜。仕事帰りに寄るつもりが打ち合わせが延びて、錦糸町に着いたのは22時を回っていた。南口を出た瞬間、昼のあいだアスファルトに溜まった熱がまだ残っていて、シャツの背中がすぐ湿った。夏の終わりというより、夏が居残っている夜だった。
普段は身を委ねる側に回ることが多い。そういう系統の店ばかり選んできたし、そのほうが自分に向いていると思っていた。ただこの日は役を入れ替えてみたかった。攻めにも受けにも回れる相手でないと成立しない遊びだ。
在籍の一覧を上から眺めていて、かぐらの写真で指が止まった。
デリヘルなので店舗の待合はない。ホテルの部屋を先に押さえて、部屋番号を伝えて待つだけ。この十分ほどが毎回いちばん落ち着かない時間で、意味もなく冷蔵庫を開けたり閉めたりしていた。エアコンが効きすぎて部屋の中だけ十月みたいに寒いのは誤算だったが、設定をいじる余裕もなかった。
指名まわりだけ補足しておくと、写真から選ぶ指名とは別に、二度目以降の本指名には特別指名料が3,000円乗る。この日の総額は70分で23,000円ほど。高いか安いかは終わってから決めればいいと思っていた。
19歳のかぐらが持っている、見えない支配力
入室から三分の、視線の攻防
時間ぴったりにノックが鳴った。
「はじめまして、かぐらです」
ドアを開けて、うわ、と声が漏れた。背が高い。164あると聞いていたが、ヒールを脱いでも視線の高さがほとんど変わらない。何度会っても初対面の衝撃が薄れないタイプの子がたまにいるが、彼女は一度目で既にその予感がした。頬はもちもちしていて、笑うと目が完全に消える。19歳という数字が、そのまま顔に出ていた。やばい、と思った。
こちらが攻める側に回るつもりで来たのに、最初の三分は完全に彼女のペースだった。好きなアイドルの話で笑わされて、気づけば自分の仕事の愚痴まで喋っている。支配される快感というのは、必ずしも縄や言葉から来るわけではないのかもしれない。座り方ひとつで場の主導権が動くのを、この日は目の前で見せられた。
境界線が少しずつずれていく
錦糸町という街は、駅の北側と南側で夜の顔がまるで違う。ホテル街を抜けるまでの数分だけ人の密度が落ちて、その落差がいつも少し好きだ。部屋に着くころには、そんなことを考える余裕はもう無くなっていたけれど。
シャワーを浴びてベッドに移ってから、ようやく役が入れ替わった。胸が弱いらしい、と本人が先に申告してきたので、そこを軽く意地悪してみた。
「そこ、だめですって……」
だめと言いながら、腰がビクンと跳ねる。嫌がっているのではなく、明らかに乗っている。攻める側に回ったつもりが、反応の良さに引きずられて、こちらの呼吸のほうが先に乱れていた。痛みの向こう側にある種類の快感を、この子は受け取る側としてちゃんと知っている。M度が高いというのは、こういうことを指すのだと思う。
キスが長い。長すぎて、正直、時間配分が崩れた。ねっとりしたのを二回三回と重ねているうちに、残り時間の表示を見るのが怖くなる。力加減を探る余裕がこちらから消えた時点で、この勝負は半分決まっていた。
途中で一度だけ手を止めて、彼女の顔を覗き込んだ。目が潤んでいるのに、口元だけ笑っている。この表情を引き出せた時点で、こちらの負けでもよかった。身を委ねるのと、委ねさせるのは、たぶん同じ場所に出る道なのだと思う。
この先は限定側に置く
ここから先、彼女がどこまで受け入れる側に回ったのか、そのときに何をどう伝えたのかは、無料で書くには具体的すぎる。動いた金額の話も含めて、投稿者限定のほうに全部残した。
錦糸町駅までの十五分で考えたこと
感覚だけ置いておく。
ルックス ★★★★★
スタイル ★★★★☆
おっぱい ★★★★☆
アソコ ★★★★☆
感度 ★★★★★
性格 ★★★★★
そういえば帰りに駅前で味噌ラーメンを食べた。23時過ぎのカウンターで汗をかきながら、さっきまでの一時間ちょっとを反芻していた。攻める側に回ったつもりで、結局こちらが引っぱられていた。この瞬間が堪らない、という感覚は、どちらの役でも変わらないのかもしれない。終電まではまだ余裕があったのに、なぜか早足で改札に向かっていた。
ひとつだけちょっと惜しかったのは、こちらが最後まで受け身に戻れなかったことだ。彼女は両方できる。だから欲張って、両方を一度の枠に詰めようとして失敗した。次はどちらかに振り切る。
また会う。それだけは駅に着く前に決まっていた。