終電を逃した夜に大宮へ
八月の金曜、勤務が終わったのが午前一時半だった。工場の門を出た時点で終電はとっくにない。タクシーを拾って、そのまま埼玉県の大宮まで走らせてもらった。
運転手が「この時間の大宮は空いてますよ」と嬉しそうに言って、実際二十分もかからなかった。メーターを見て、やばい、と声が出た。往復ぶんで一回遊べる金額だ。
帰って寝ればいいのは分かっている。ただ、夜勤明けの体というのは変なもので、疲れているほど人肌のほうへ勝手に足が向く。判断も雑になる。
財布に新規割の紙が入っていた。決め手はそれだけ。
OneMore奥様 ワンモア奥様 大宮店で会ったみなせ
東口から歩いて七分
さいたま市の大宮駅東口は、この時間でもまだ生きている。飲み終わった集団と、始発待ちで座り込んでいる人と、しつこい客引き。八月の深夜は蒸し暑いを通り越して不快で、駅から歩いているだけでシャツが背中に張りついた。正直、この街の空気はあまり好きになれない。
デリヘルなので店舗はない。ホテルに先に入って、部屋番号を伝えて待つ形になる。土地勘がなくてホテル選びで固まっていたら、受付の人が「その通りなら三軒ありますよ」と候補を挙げてくれた。この時間帯に開いてる店は少ないうえに、受付がちゃんと起きていて土地勘まで貸してくれる店はもっと少ない。部屋に入ってシャワーを済ませ、備え付けの冷蔵庫から水を出して飲んだところで内線が鳴った。ここまでで十五分くらいだろうか。待たされたという感覚はまったくなかった。
料金は新規割で百分一万四千五百円、室料は別。
指名は写真から選ぶ形で、事前に伝えておけば衣装を用意してもらえるらしい。それを知ったのは部屋に着いてからだったが。
ドアが開いて最初に思ったこと
小さい。148cmと書いてあったのは誇張じゃなかった。目線がこっちの胸のあたりにくる。
驚いたのは格好のほうで、この日はメイド服だった。頼んでもいないのに用意してきたらしい。「今日は着たい気分だったので」と言われて、返す言葉がなかった。フリルの多い黒白の衣装で、袖口を引っぱって手を隠す仕草をする。その手つきまで含めて作り物っぽさがない。あとから現役でコスプレをやっている子だと聞いて、なるほどと納得した。部屋の照明を一段落としていたせいもあると思う。薄暗いなかで白いフリルだけが浮いていて、まじで一瞬、状況を見失った。夜勤明けの体には刺激が強すぎる。
顔は写真より実物のほうがいい。ベビーフェイスというのか、幼さの残る輪郭に、喋ると出てくる独特の間。話していて心地がいいタイプで、疲れた頭に妙に染みた。
衣装を脱がせると、148cmの体にFカップは反則だった。形が崩れていない。触れると柔らかくて、ぷるぷると手のひらから逃げる。下は白いレースで、これも自前だという。
感覚のメモ
ルックス ★★★★★
スタイル ★★★★☆
おっぱい ★★★★★
アソコ ★★★★☆
感度 ★★★★☆
性格 ★★★★★
数字にすると平板になるが、実際は顔と性格でこっちが崩されるタイプだった。スタイルの評価は低身長ぶんで好みが分かれると思う。
触れ方の入口だけ書いておく
ベッドに並んで座って、しばらく喋った。ゲームとアニメの話で、こっちが知らないタイトルばかり出てくる。放っておくといつまでも喋っている。これが後で効いてくるのだが、その話は限定側に回そう。
最初に唇が触れたのは、向こうからだった。触れるだけのつもりが、角度を変えて何度も来る。眠気はここで完全に飛んだ。
うつ伏せにして背中に手を置く。肩甲骨のあいだを爪の先で撫でるように、ゆっくり下ろしていく。息が変わるのが分かる。腰の窪みのあたりで手を止めると、待ちきれない感じで足がもぞもぞ動いた。ビクンと跳ねたのはその直後。
入口はここまで。
この先どこまで行って、どこで止まったのかは限定エリアに置いた。名前も店も上に書いてあるから、必要なのは中身のほうだけだろう。
始発を待ちながら
外に出たら四時半。空の東側だけ色が変わり始めている。朝日が昇る前に帰るつもりだったのに、結局は駅前の牛丼屋で味噌汁だけ頼んで座っていた。隣の席では知らない誰かが突っ伏して寝ている。同類だな、と思う。
ちなみにホテルの部屋にVODが付いていて、その存在に気づいた彼女が勝手にリモコンを触り始めた場面がある。何を再生したかは書かないでおく。
不満がないわけではない。エアコンが効きすぎていて、途中からずっと寒い。あと、背中を撫でていたときの力加減が最後まで噛み合わなくて、そこはこっちが口で言うべきだった。喋りが面白いぶん時間配分も甘い。放っておくと喋りだけで終わる。舵はこちらが取ったほうがいい。
それでも、疲れた体に染みたという意味では悪くない夜だった。深夜に大宮まで出た元は取れている。