先に書いておくと、この日は不発を覚悟していた。前の週から連戦が続いていて、そういう日に自分の体がどうなるかは十年もやっていれば見当がつく。結果は逆だったんだが、順番に書く。
もともと別の店に入れていた枠が、当日の夕方に飛んだ。詫びの電話をもらった時点で仕事はもう早上がりしていて、そのまま家に帰る気にはなれなかった。前から気になっていた子が一人いる。新人で入ったころから何度か狙っては外していて、この日もダメ元のつもりで電話したら、ちょうど空いていると言われた。期待した分だけ落ちるのが世の常だ、と自分に言い聞かせながら電車に乗った。
山手線で鶯谷まで出たら、小雨が上がったばかりで路面がぬるく光っていた。ホテルの階段が急で、上がりきったところで一度息を整える羽目になった。この歳になると、そういう場所で年齢を思い知らされる。部屋はエアコンの効きが悪くて暑い。待ち時間の十分でシャワーを浴び直したくらいだ。
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洗い場で、まず手つきを見た
ソープ通いが長いと、どうしても洗いから人を見る癖がつく。この店は当然マットもないし、狭いユニットバスで立ったまま流すだけだ。それでも手の動きには性格が出る。
背中から始めて、脇の下、腰骨のあたりまで泡を回してくる。爪を立てず、指の腹をぴったり当てたまま滑らせる手つきだった。前に回ってきたときも、体の正面をこすらずに手のひらで押さえるように洗う。時間としては五分か六分だが、雑に済ませて終わりという感じはしない。もっとも、シャワーの水圧が弱くて泡がなかなか落ちず、二人で無言のまま流し続ける間抜けな時間があった。ここのホテルの設備はいただけない。
洗いながら「背中、凝ってますね」と言われたので、デスクに座りっぱなしだと答えたら、そこから肩甲骨の間を親指で押してきた。マッサージのつもりらしい。加減が的確で、これは学校で習っているのかと聞いたら笑って否定された。
途中で攻守が入れ替わった
ベッドに移って、いつも通りこちらから先に攻める段取りで入った。首筋から鎖骨、脇の下へと順に落としていったが、反応はいまひとつ。十年やってきた手順どおりに動かして、これだけ薄いのは久しぶりだった。
ところが、ここで妙なことが起きた。
「そこより、耳のうしろのほうが効きます」と本人から注文が来たのだ。自分から感じる場所を口で説明してくる子には、それまで当たったことがない。半信半疑で言われた場所に指を動かすと、背中がビクビク跳ねた。二度、三度と続けて跳ねる。指の腹をどう当てるか、速さはどれくらいか、そこまで教えてくる。
正直に言えば、途中で少し焦った。注文が細かく続いた区間があって、手順を読み上げられている気分になったからだ。攻めているのはこっちのはずなのに、指示を受けて動く側に回っている。一瞬、事務的に感じた。
ただ、言われたとおりにやると結果が出る。これは面白い。乳首は左のほうが強く出ると言うので、そちらを舌で転がしながら、右手は下に伸ばして太ももの内側を撫でた。指を寝かせて、腰が浮いたら止める。止めると本人が腰を追いかけてくるので、そこでまた戻す。二度繰り返したところで太ももが震えはじめた。
指を入れると、中は狭い。締めつけてくるというより、動かすたびに絡んでくる感じだ。奥までは行かず、入口から二関節ぶんのところを、教えられたとおり一定のリズムで押した。声が高くなって、途中から言葉にならなくなる。それから先は数えるのをやめた。指はとっくにぬるぬるで、シーツまで湿っている。
「もう無理です、交代してください」と言われたのが、たぶん入室から二十分過ぎ。攻め切ったというより、こっちが教わりながら攻めさせてもらった二十分だった。
終わり方
横になれと言われて、そこからは口で。これが丁寧だった。根元まで一度沈めて、そこで止めて、上目でこちらを見る。唾液の量が多くて、ちゅぱちゅぱ音を立てながら緩急をつけてくる。手は遊ばせずに袋を包んだままだ。速いだけの子とは違って、こちらの呼吸を見ながら止めるところで止める。
「気持ちよくさせるほうが好きなんです」と言って笑っていた。研究しているらしい。学校で覚えるものではないだろうが、真面目な子ほどこういうところを詰めてくるのかもしれない。たまらんな、と口から出かかって飲み込んだ。
そのまま上に乗ってきた。M字に開いて腰を落としながら、上体を倒して乳首を舐めてくる。この二段構えは効く。腰の落とし方も浅く速くではなく、根元まで沈めてから止める動きで、こちらが逃げようとすると膝で挟んで押さえてきた。ただ、舌の力加減が強すぎて痛みが混じった。「そこ、もう少し弱く」とこちらから止めたのが、この日唯一の注文だ。すぐに加減してきたあたりは、さすがに飲み込みが早い。
入口は小さめで、締まりも申し分ない。手入れは行き届いていて、色白の肌にそこだけ淡い色が残っている。下は完全に処理してあった。角度を変えようと正常位に移したところで、こっちの限界が先に来た。連戦で不発を覚悟していた男が、逆に持たずに終わったわけだ。情けない話だが、こうなるくらいなら不発よりはるかにいい。
終わったあと、しばらく二人とも黙っていた。エアコンの音だけがうるさかった。濡れタオルを取ってきて拭いてくれる間も、こちらの息が戻るまで急かさない。この落ち着き方は二十代前半の子のものではないな。
風呂上がりに、この子は続くと思った
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身支度をしながら、学業と両立して続けるつもりだと話していた。この手の話は半分は社交辞令だが、この子については本当に続きそうだと思った。体力の使い方が上手いというか、無理をしていない。
派手さで殴ってくるタイプではない。写真で一目惚れして駆け込む種類の子でもないだろう。ただ、こういう子が一人押さえてあると、予定が飛んだ日や連戦で疲れている日の逃げ場になる。困ったときの裏返し候補としては鉄板だな。次に枠が空いていたら、迷わず同じ子を指名する。
帰りは駅前で立ち食いそばを一杯やって、そのまま終電前の山手線で帰った。前に来た時は同じ道で財布を落としかけて焦ったので、今回はポケットを二回確認した。
この子の名前とお店の情報は、登録者限定エリアに書いてある。