南町の坂道で足が止まった夜
八月最後の金曜、仕事帰りの川崎はまだ湯気みたいな熱を抱えていた。電車の乗り換えで快特に乗ってしまい、一駅ぶん戻る羽目になったのが今日の最初のつまずきだったな。汗だくで東口の改札を出たときには、もう予定より二十分遅れていた。徒歩でだいたい十分、看板の光が両側から降ってくる通りに入っていく。
その中でシャングリラ川崎の前だけ、俺は足が止まった。
理由ははっきりしている。出勤ページで見た一枚だ。赤い猫脚の椅子に横向きに腰かけて、こっちを見ている女の子。俺は顔の造りから入る人間じゃない。椅子の座面に沈んだラインのほうを、たぶん三分は見ていた。この丸みよ、と口の中で言ったのを覚えている。
入り口を抜けるとすぐ受付で、ボーイさんが指名の有無と希望のコースを聞いてくる。写真を見て決めていく形が基本だから、俺みたいに一人に決め打ちしてきた客は名前を伝えるだけでいい。予算はだいたい二万円くらいから、コースを厚くすると四万円あたりまで届く。そのへんは受付のボードで最初に確認できるようになっていた。案内までの導線が短いのは、緊張している側にはありがたい作りなんだよ。
待合は正直、狭い。先客が三人いて、俺は壁際に浅く腰かけて自分の膝ばかり見ていた。ソープ自体、片手で数えられるくらいしか経験がない。エレベーターを待つ二分が、体感では十分あった。
あかりさんと、あの丸みのこと
頭の中で唱えていたこと
階を上がる間、考えていたのは一つだけだった。写真、いつのだ。
並んでいたカットは色の作り方がどこか少し前の流行に見えて、使い回しなら実物との落差はどうなんだ、と勝手に不安になっていた。尻フェチを長くやっていると、椅子や毛足の長いラグで輪郭をごまかす角度をだいたい覚えてしまう。あの一枚は、ごまかす気がない角度だった。だからこそ外れたときが怖かったんだよ。
実際に口から出た言葉
ドアが開いて出てきたのは、写真と何ひとつ変わらない人だった。スタイルも、あの座り方で分かるラインも、そのまま立ってこっちを見ている。「はじめまして、あかりです」と先に言われて、俺の口から出たのは「よろしくお願いします」の一言だけ。それ以上が続かない。
第一印象は、思っていたよりずっとクールだった。目線の置き方が落ち着いていて、こっちが勝手に構えてしまう。ところが部屋に入って荷物を置いた瞬間に空気が切り替わって、笑顔で「今日、蒸しますよね」と振ってきた。そこからはトークが止まらない。乗り換えを間違えた話をしたら本気で笑ってくれて、俺の緊張はそのへんで溶けた。クールに見えたのは廊下の三十秒だけだったな。
服を預かってもらう流れで、後ろ姿を正面から見る形になった。T165でこの位置にこの張りが乗っているのは反則だと思う。上向きに角が立つタイプじゃなくて、下側にぷるぷると重さが集まって、そこから太ももへ落ちていく。指を当てるともちもちと沈んで、離すと戻る速さがちゃんと速い。二十三歳の尻だ、というのがそこで分かる。
尻は嘘つかない。この一枚だけは、パネルのほうが実物に負けていた。
Fカップのほうは本人が気にしているみたいだったけど、俺の視線はさっきから下にしかいっていない。そう白状したら「そういう人、たまにいます」と笑われた。
湯気の先で進んだ時間
洗い場に移ってからは、正直あんまり言葉が出なかった。
手順が早いのに雑じゃない。椅子に座らされて、まず湯を頭からかけられる。泡は最初に多めに作って、背中から入って、肩、腰、と順に落としてくる。手のひらの当て方が場所ごとに変わるのが分かって、肩甲骨のあたりは指の腹で細かく、腰から下はぬるぬると面で滑らせてくる。途中で一度だけ湯を足して泡を作り直したのも、こっちの体が冷えかけたのを見ていたからだと思う。これがやばい。今まで行った店を全部並べても、洗い場でこれより上と言えるところはたぶん一軒も出てこない。
途中で背中に体を預けられて、あの丸みが背骨のあたりに当たった。そこからねっとりと上下に動かれると、もう頭の中が白くなる。「気持ちいいですか」と耳元で聞かれて、俺は「うわ」としか返せなかった。
洗いの力加減は、こっちの好みより少し強い瞬間があった。ただ俺の背中が凝りすぎていただけかもしれない。湯の温度も少しぬるめだったが、長い時間ずっと肌を触っている側の設定としては正しいんだろうと思う。
ここから先、ベッドに移ってからのことは無料の側には書かない。
俺の採点
ルックス ★★★★★
スタイル ★★★★★
おっぱい ★★★★★
アソコ ★★★★☆
感度 ★★★★☆
性格 ★★★★★
電車の中で考えていた
店を出たら22時前で、川崎駅のガード下のラーメン屋がまだ開いていた。冷たいのを一杯すすりながらさっきの感触を指先で思い出していた自分は、たぶんかなり気持ち悪い顔をしていたと思う。そういえば、帰り際にボーイさんが傘を貸そうかと聞いてくれたのを断ったのだが、駅に着く手前で雨がぱらついて少し後悔した。
初心者に毛が生えた程度の俺が言うのもなんだけど、この店は最初の一軒に選んでいいと思った。受付から見送りまでボーイさんが丁寧で、こっちが分かっていない部分を先回りして言葉にしてくれる。
あかりさんを次に指名するときのコツと、部屋で実際に何があったかは、投稿者限定エリアに置いた。