千束の路地へ、送迎の車で
十月も終わりに近い火曜の午後、予定していた打ち合わせが一本流れた。ぽっかり空いた三時間をどう使うか、上野の駅前で缶コーヒーを片手にしばらく考えた末、私は吉原へ足を向けることにした。
鶯谷・吉原・上野と呼ばれるこの一帯には、かれこれ二十年近く通っている。コートダジュールは以前から名前だけは知っていた店であったが、暖簾をくぐるのはこれが初めてだ。決め手になったのは、予約画面で見かけた一人の女性の写真と、ゲームやアニメが好きだと屈託なく書かれたプロフィールの一文である。こういう素直な自己紹介を書く人は、たいてい会話が楽しい。長年の経験から来る勘と言えよう。
駅前で拾ってもらった送迎の車は、思いのほか早く千束の通りに入った。受付から案内までは十分もかからない。ただ、待合室が少し寒い。エアコンの風が真上から落ちてきて、上着を脱ぐべきか迷っているうちに名前を呼ばれた。
正直、焦った。
案内係の青年の物腰は丁寧で、こちらが初めてだと告げると、部屋の構造や湯船の位置まで手短に説明してくれた。古い店構えの多いこの界隈では、こうした細やかさが案外ありがたい。
白い肌と、よく笑う目元のかぐや
階段の上で待っていた彼女は、写真で受けた印象よりわずかに大人びて見えた。華奢な骨格に、豊かで柔らかな胸元の曲線。肩まわりがすっきりしているぶん、そのふくらみがいっそう際立つ。
何より目を奪われたのは肌の白さである。廊下の照明を受けて、シルクのような光沢を帯びていた。
「はじめまして、かぐやです」と言って、彼女はくしゃっと目を細めて笑った。月明かりのような微笑み、と書けば気取りすぎだろうか。だが、あの笑顔を前にすると、四十を過ぎた男の緊張などひとたまりもない。手を引かれて部屋へ向かう数歩のあいだに、私の肩の力はすっかり抜けていたのであった。
湯船の前の、たわいない三十分
部屋に入るなり、彼女は私の鞄から覗いていた携帯ゲーム機に目を留めた。
「え、マジで?それ私もやってる!」
そこから先は、白状すると色気より先にゲームの話で盛り上がった。同じタイトルを遊んでいて、好きな登場人物の話になると彼女の声が一段高くなる。性格診断の話題にも飛び、互いの結果を見せ合って笑った。私は口数の多いほうではないが、気づけば仕事の愚痴までこぼしていた。好き嫌いがはっきりしていて、自分の考えをきちんと言葉にできる女性である。それでいて、相手の話を遮らない。聞き上手と話し上手が、ひとりの中で無理なく同居していた。
そういえば、と上野で食べ損ねたラーメンの話をしたら、彼女は真顔で「体型管理中だから、その話は禁止」と言い、それから吹き出した。
こういうやり取りが自然にできる相手は、案外少ない。
洗い場で、主導権が入れ替わる
ひとしきり話したあと、洗い場へ移った。泡を手に取った彼女の指が、ぬるっと背中を滑っていく。触れるか触れないかの距離を行き来する焦らしの間合いが、実に巧みであった。
年甲斐もなく、身体がビクンと跳ねた。彼女は楽しそうに目を細め、「ここ、弱いんだ?」と耳元で囁いた。
柔らかな物腰からは想像しにくいが、彼女はかなり攻めの得意な女性である。ただし一方的ではない。こちらの呼吸を読みながら、押すところは押し、引くところは引く。相手に合わせて温度を変えられるのは、場数だけでは身につかない資質だと思う。
この先、マットとベッドの上で何がどこまで進んだのかは、限定エリアに記しておく。表で書けるのはここまでと言えよう。
上野駅まで歩きながら思い返したこと
今回の所感を、項目ごとに並べておく。
ルックス ★★★★★
スタイル ★★★★★
おっぱい ★★★★★
アソコ ★★★★☆
感度 ★★★★☆
性格 ★★★★★
注文をつけるとすれば、焦らしが長いぶん終盤の時間がやや物足りなく感じたことだ。もっとも、これは私の時間配分の拙さでもある。話し込みすぎた三十分を、少しだけ後悔した。
帰りは送迎を断り、入谷まで歩いて日比谷線に乗った。夕方の電車は空いていて、窓に映る自分の顔がやけに緩んでいるのが可笑しかった。途中のコンビニで買った温かいお茶を飲みながら、次は平日の昼間に、もう少し長い枠で来ようと決めていた。ゲームの話の続きも、まだ半分しかしていない。
家に着いてから、彼女が勧めてくれたゲームの攻略を少しだけ調べた。四十代の男が夜更けにすることではないと分かってはいるのだが、次に会うときの話の種がひとつ増えたと思えば、それも悪くない。
洗い場の続きと、ベッドの上で彼女が見せたもう一つの顔は、限定エリアで。