十月の水曜、午後から雨が降り出した日のことでした。午前中の仕事が思いのほか早く片づき、手帳を見ると夕方まで何も入っていない。こういう空白ができると、私はだいたい吉原の方角を考えます。
雨の水曜、千束四丁目まで足を延ばした理由
ムーランルージュは以前から名前だけは知っていて、一度は入っておきたいと思っていた店です。高級店を名乗る店は吉原に数多くありますが、待合や廊下の手入れ、ボーイの所作まで含めて「店の格」が揃っているところは、実はそう多くない。そこを自分の目で確かめたかった、というのが正直な動機でした。
ただ、出だしからつまずきました。
事前の確認電話で、指定の駅に送迎の車が来ると聞いていたのに、約束の時刻を過ぎても車が現れない。店に電話をすると、車の手配がつかないのでタクシーで来てほしいとのこと。雨の中、傘を畳みながらタクシーを拾うのは、高級店に向かう者の気分としてはいささか残念でした。運転手さんがラジオで競馬中継を流していて、千束の交差点に着くころには第何レースだったか、妙に覚えてしまっています。外れ馬券を握りしめたような顔で、運転手さんが「今日は荒れてますね」とぼやく。こちらは馬券を買っていないので、相槌の打ちようがありませんでした。料金を払って車を降りるころには、雨脚が少し強くなっていて、店の軒先まで小走りになったのも余計でした。
上着の肩が濡れていました。
店に入ってしまえば、そこからは別世界でした。待合は静かで、ソファの革にもへたりがない。トイレも廊下も、どこを見てもきちんと拭かれている。お茶を運んでくれたボーイさんの膝の折り方まで丁寧で、送迎の件で少し尖っていた気持ちが、ここでいったん均されました。
この差は大きい。
指名は電話の段階で決めていました。店のサイトで写真を見比べて、いちばん表情に芯のありそうな方を選んだ、という程度の理由です。受付で名前を伝えると、ボーイさんが「少しお待ちいただきますが、待っていただく価値はあります」と言う。こういう一言を言える店は、だいたい信用していい。待合で二十分ほど、窓の外の雨を眺めていました。
階段の上で待っていた写真どおりの顔、ありさ
名前を呼ばれて階段へ向かうと、踊り場に彼女が座って待っていました。宣材の写真は加工の強い店も多いので、私は普段あまり信用しないのですが、ありさは写真と同じ顔がそのまま目の前にいた。編み込んだ髪に、白いワンピース。目元がはっきりしていて、笑うと口角がきゅっと上がる。
こちらが「はじめまして」と言い終わる前に、彼女はもう腕を絡めてきました。
高級店の嬢というと、もう少し間合いを取って、客の様子をうかがいながら距離を詰めてくる方が多い。ありさは真逆でした。人なつっこい、というより、さっぱりしている。気取らずに笑い、言いたいことは言う。私はこういうサバサバした方とはあまり縁がなかったので、最初の数分は少し戸惑ったくらいです。
これは当たりだ、と思いました。
部屋へ向かう廊下で、彼女が「緊張してます? 顔に出てますよ」と笑いました。図星でした。
ルックス:★★★★★
スタイル:★★★★★
おっぱい:★★★★★
アソコ:★★★★☆
感度:★★★☆☆
性格:★★★★☆
服の上からでも分かる胸の張りと、腰まわりの締まり方の差は見事で、ここは文句のつけようがありません。一方で、私が高級店に求める「もてなしの様式」という意味では、彼女の持ち味は少し方向が違う。その話は後で触れます。
部屋の扉が閉まってから、最初の数分のこと
こちらが上着を脱ぎ終える前に
部屋は広すぎず、照明はやや落としてありました。洗面台の脇に日本酒の小瓶がいくつか並んでいて、聞けば各地で集めているものだそうです。そういえば、旅行先で酒蔵に寄るのが好きだと話していました。
普通ならここで飲み物を頼み、少し世間話をして、という流れになるはずです。ところが彼女は、私の上着を受け取ってハンガーに掛けると、そのままネクタイに指をかけてきた。キスはねっとりと長く、こちらが主導権を取り返す隙がない。どちらが客なのか分からない、というのが率直な感想でした。
ここから先、ベッドの上で何が起きたか、二回目がどういう流れになったかは、限定エリアのほうに書いておきます。無料で読める範囲では、ここまでにさせてください。
帰りのコンビニで買った缶コーヒーと、点数の付け直し
終わってみれば、プレイの合間に一時間近く話し込んでいました。ゲームの話、配信者の話、地方のお酒の話。正直、私にはついていけない話題も混じっていましたが、彼女の話しぶりが面白いので退屈はしなかった。むしろ、話の切り替えの速さに感心したくらいです。こちらが少しでも興味を示した話題は掘り下げ、反応が薄いと見るやすぐ次へ移る。接客の型というより、場を回す勘の良さなのでしょう。
ただ、格式張った高級店らしさを求める方には、好みが分かれると思います。キャバクラに近い明るさ、と言えば伝わるでしょうか。私の点数も、店の空間と彼女の容姿だけなら満点に近いのですが、送迎の件と、もてなしの様式の違いを差し引いて、全体では少し下がります。
帰りは雨が上がっていて、駅までのタクシーは使わず歩きました。途中のコンビニで缶コーヒーを買い、店の前の植え込みに目をやりながら、あの部屋の空間そのものが特別だったな、と振り返ったのを覚えています。
堪らない二時間だったのは間違いありません。ただ、それがどういう種類の「堪らない」だったのかは、限定エリアで正直に書いています。