有給を取った水曜の朝、九時半のホテル
あの日のことを、忘れないうちに書いておきたくなった。名古屋市東区から出ているデリヘル、AVANCE(アヴァンス)でねねさんに会った朝のこと。
人妻って響きだけで財布の紐がゆるむ性分なのに、この店のこの人だけはずっと手が届かなかった。出勤表を開くと、だいたい枠が埋まっている。夜に見ても、翌日の分はもう残っていない。そんなことが何週間も続いていた。
たまたま水曜に休みが取れたので、前の晩にダメもとで予約画面を開いたら、朝九時半だけぽつんと空いていた。押さえた瞬間、ひとりの部屋で「マジで」と声が出た。
当日は朝から小雨。地下鉄を降りて栄のホテルまで徒歩で五分ほどなのに、傘を忘れてコンビニで買ったビニール傘がやたら小さくて、右の肩だけしっかり濡れた。ついでに買った缶コーヒーは、緊張で半分も飲めなかった。
部屋は正直狭い。ベッドと一人掛けのソファでほぼいっぱいで、濡れた上着をどこに掛けるかで少し迷った。時間ぎりぎりに着いたせいで、店への到着連絡を入れるときに指が震えて番号を押し間違えたのは、ちょっと恥ずかしい思い出だ。
先が思いやられた。
電話口の女性スタッフの声がやわらかくて、それだけで少し落ち着いた。
待つあいだ、窓の外の濡れた屋根をぼんやり見ていた。
ねねさんという人
笑ったときに目尻が下がる
ノックの音がしてドアを開けると、思っていたより背の高い人が立っていた。実際は158cmくらいのはずだけど、首も腕も細いぶん、すらっと縦に長く見える。
第一声は「雨、大丈夫でした?」。こっちの濡れた肩にすぐ気づいて、バスタオルを一枚渡してくれた。その一言で、肩に入っていた力が抜けた。
顔立ちは綺麗系なのに、笑うと目尻がくしゃっと下がって急に可愛くなる。あれは反則だと思う。若いのに色気がある、というのはこういう人のことなんだと思ってしまった。
話していて楽なのは、聞くのが上手いから。仕事の愚痴を少しこぼしたら、相づちだけで流さずにちゃんと質問を返してくる。気づけば十分くらい、どうでもいい朝ごはんの話をしていた。彼女は朝はコーヒーだけで済ませる派らしい。そして人妻らしさは、言葉より手元に出る。脱いだ服を畳む手つき、ホテルのスリッパを揃える向き。結婚してるからこそ身につく暮らしの手触り、みたいなものがあちこちにあって、そのたびに胸の奥がざわついた。
ルックス:★★★★★
スタイル:★★★★★(腕も脚も細い)
おっぱい:★★★★☆
アソコ:★★★★☆(触れた範囲での印象)
感度:★★★★☆
性格:★★★★★(聞き上手)
おっぱいは手のひらに収まるくらい。形が綺麗で、細い体にちょうどいいバランスだった。脚はまっすぐで、ふくらはぎの線がきれい。
湯船の前で縮まった距離
始まりはお風呂から。シャワーの温度を自分の手で確かめてから「熱くない?」と聞いてくれる。こういう細かさは、たぶん普段からの癖なんだろう。
泡で背中を洗われているうちに少しずつ距離が近くなって、気づけば向き合ってキスしていた。ちゅぱ、と小さな音がして、ねっとり舌が絡んでくる。この背徳感がたまらない。
ベッドに移ってからのことは、ここには書かないでおく。ひとつだけ言うと、こっちが攻めるつもりで構えていたのに、あっという間に主導権を持っていかれた。
その続きと、次に指名するとき知っておくと得なことは限定エリアにまとめた。
帰りの地下鉄で思い返していたこと
七十分は短かった。物足りなかったのは中身じゃなくて時間のほうで、次は長めのコースにすると帰り際にはもう決めていた。
ホテルを出ると雨は上がっていて、さっき買ったビニール傘をどうするか迷った末に、結局ぶら下げたまま矢場町のほうまで歩いた。昼前のラーメン屋はまだ空いていて、カウンターの端で味噌を頼んだ。替え玉を頼むか迷っているあいだも、玄関で小さく手を振ってくれた顔が頭から離れなかった。スープを飲み干したころにようやく、自分がずっとにやけていたことに気づいて、店員さんと目が合わないように下を向いた。
枠が取りにくいのは、たぶん偶然じゃない。綺麗なだけの人なら、ここまで予約は埋まらないと思う。会話の温度と、相手のペースを読む勘の良さ。その両方を持っている人は、案外少ない。
人妻に何を求めるかは人それぞれだけど、話も含めて丸ごと癒されたい人には、まず名前を覚えておいてほしい人だった。
その夜、寝る前にまた出勤表を開いてしまった。