日本橋の夜に足を止めた理由
金曜の夜。仕事を早めに切り上げて、電車で大阪市の日本橋まで出た。ふだんは三宮のあたりで遊ぶことが多いんだけど、その週はどうにも同じ景色に飽きていて、知らない街の知らない店に入りたい気分だったな。
結果から書くと、この夜は当たりだった。
日本橋は家電とアニメの看板が延々と続く通りで、少し裏に折れると空気が変わる。二十一時前でもまだ暑い日で、駅から十分ちょっとの徒歩でシャツが背中に張り付いた。途中のコンビニでアイスコーヒーを買って、飲みながら歩いたのを覚えている。
ギン妻パラダイス日本橋は、雑居ビルの一室に受付を構えるホテヘル。入り口はぱっと見そっけないのに、扉を開けた先は照明を落とした落ち着いた内装で、そのギャップにやられた。待合は広くはない。というより普通に狭い。ただ床も壁も手入れが行き届いていて、清潔感あるという第一印象は最後まで崩れなかったな。
この店は、受付に着くとすぐ案内できる女性のパネルを並べて見せてくれる方式だった。写真を眺めながらスタッフと二、三言やりとりして、その場で決める。誰と決め打ちしなくても遊べるので、こういう突発的な夜には向いている。決まったら女性と合流して、そのままホテルまで一緒に歩く。部屋に入ってから店に連絡を入れて時間が始まる、というシンプルなシステムって感じだった。
御阪ゆうきと向かい合って
細い脚と、思っていたより若い顔
パネルの中で目に留まったのが御阪ゆうき。三十代後半と数字だけ見れば熟女の枠なんだけど、実際に出てきた人は顔まわりの印象がずっと若い。可愛い系という言葉がいちばん近いって感じ。
細身。とにかく脚が細くて、ヒールを履いた立ち姿がきれいだった。158センチという背丈に対して、腰から下の線が実際より長く見える。胸は控えめなほうだけど、体全体のバランスとしてはむしろそっちのほうが合っている。
着ていたワンピースの色が淡いオレンジで、ホテルの廊下の照明の下だとその色が肌によく馴染んで見えた。服の趣味も含めて全体に品がある。三十代後半という数字を先に見てから会うと、たいていは年齢の想像が上振れするものだけど、この人については完全に逆に振れた。
腕が触れてからの空気
とにかく、よく喋る人だった。
ホテルまでの数分、ずっと喋っていた。というより、向こうが一方的に喋る。こっちが相槌を打つ隙間に、もう次の話題が滑り込んでくる。黙って歩く時間が一秒もなかったと言っていい。
「日本橋って来るの初めてですか」から始まって、気づけば互いの仕事の愚痴になっていた。信号待ちで腕が触れて、そこで初めて相手の体温を意識した。手が小さくて、指先がひんやりしていたのを覚えている。
喋る内容も薄くない。休みの日に何をしているかとか、この街の飯屋がどこが当たりかとか、その手の他愛のない話を途切れさせずに繋いでくる。相槌の返しが速いんだと途中で気づいた。
正直に書くと、この話し好きは人を選ぶと思う。無言の空気を作りたい人には物足りないかもしれないし、持ち時間を削られたと感じる人もいるはず。タバコの匂いは一切しなかったので、そこは自分にはありがたかった。まじで苦手なので。
ここから先を書かない選択
部屋に入って、店に一本連絡を入れて、タイマーが動き出す。そこからの流れを無料の側に全部書いてしまうと、この夜は味気ないものになってしまう。
ひとつだけ書いておくと、この人はいきなり始めない。ベッドの端に座って、こっちの顔をちゃんと見て、何をしたいのかを先に聞いてくる。その数十秒があるかないかで残りの密度がまるで変わるんだと、終わってから気づいた。無言でシャワーに追い立てられて、流れ作業のように進んで、気づいたら終わっているという遊び方が続いていた時期があったぶん、この最初の確認だけで印象がずいぶん変わったな。
ホテヘルという業態は、部屋に着くまでの移動時間がそのまま相手を測る時間になる。その意味では、受付でパネルを見て決めてから一緒に歩かせるこの店のやり方は、この人にいちばん噛み合っていると思った。
採点はこんなところ。
ルックス ★★★★☆
スタイル ★★★★☆
おっぱい ★★★☆☆
アソコ ★★★★☆
感度 ★★★★☆
性格 ★★★★★
この先の九十分の中身と、聞かれたことにどう答えたのか、それから金額まわりの話は、限定エリアのほうに置いておく。
ドアが閉まってからの十五分
部屋を出てエレベーターを待つ間、急に無音になる。
その夜のことを反芻するのは、たいていこの十五分だ。
そういえば帰りに何か食べようと思っていたのに、結局は駅前のラーメンに吸い込まれた。深夜の店内は妙に明るくて、汗をかきながら啜っているうちに、さっきまでの時間が少しずつ遠くなっていく。おしゃれな店を探して歩くのが半分趣味みたいなものだけど、この夜に関しては内装より人のほうが記憶に残ったな。