金曜の夜に京都から大阪へ出るときは、たいてい何かに追われているものだったな。
その日は珍しく夕方のうちに仕事が片付いた。八月の終わりで、日が落ちても蒸し暑い。夜になって少しだけ雨がぱらついたが、傘を差すほどでもなかった。四条で電車に乗ったら窓に自分の顔がぼんやり映っていて、我ながら締まらない顔をしている。京都は表と裏があって、遊ぶなら裏の通りをたどるのが性に合っているのだが、その晩はどういうわけか淀川の向こうまで足を伸ばす気になっていた。深夜まで粘るつもりはなかった。終電で帰れる範囲で、ひとつだけ寄り道をするつもりだったな。ホームで缶コーヒーを買おうとして小銭が足りず、結局そのまま乗り込んだあたりから、その日の段取りはもう少しずつ狂っていたのかもしれない。
淀川を渡って、此花の夜へ
此花区は、大阪のなかでも掴みどころのない土地ではある。倉庫と工場の塀がずっと続いたかと思えば、その隙間に古い長屋と真新しいマンションが肩を並べている。対岸には夢の国の照明が白く滲んでいるのに、こちら側の通りは驚くほど静かだった。DAN☆GAN OSAKAは、この界隈を軸にして大阪市内へ女の子を届けてくれるデリヘルだ。梅田から地下鉄で十数分、駅の階段を上がればもうホテルの袖看板が視界に入る。京都みたいに石畳をたどる情緒はない。その代わり、初めてでもまず迷わない。タクシーを拾う必要すらなくて、方向音痴には有難い街ではある。
段取りは拍子抜けするほど素直だった。先に部屋を押さえて、部屋番号を伝えて、あとは待つ。指名は写真を見て決める形で、同じ子をもう一度呼ぶなら三千円が上乗せになる。この手の上乗せは京都でもだいたい同じ相場だから、驚くような額ではない。
ただ、その日は四十分待った。
備え付けの自販機で買ったコーヒーがぬるくて、テレビの音を絞ったまま天井を眺めているうちに、正直すこし気持ちが萎えかけた。文句を言うなら店ではなく、金曜に思い立った自分にだろう。
扉の向こうにいた、らあら
目に入ってきたもの
ノックが二回。ドアを開けた瞬間に「うわ」と声が漏れた。パネルで見ていた顔より、目の前の子のほうがはっきり可愛い。この業界の写真は盛るのが当たり前みたいな顔をしているのに、この子だけは逆で、写真のほうが本人に追いついていなかった。パネマジという言葉を持ち出すのが失礼になる種類の落差だったな。
らあらは二十歳。158センチで、ニットの袖から出た手首が折れそうなくらい細い。それでいて胸元だけはしっかり丸みがある。黒目が大きくて、こちらを見上げるときに一拍おいて瞬きをする癖があった。
名前が界隈に轟いているタイプではない。まだ広くは知られていない側の子だと思う。
触れて分かったこと
急ぐのは野暮だった。
最初のうち、彼女は明らかに緊張していた。声が小さくて、笑うタイミングも少し遅れる。こういうときに畳みかけるのは粋じゃないので、こちらも歩幅を落とした。風呂場で背中を流しながら他愛のない話をしているうちに、言葉の数がだんだん増えてくる。「お兄さん、京都から来たん?」と訊かれて、そうだと答えたら「遠っ!」と笑われた。湯気のなかでようやくほどけた表情になって、そこから先は早かった。
濡れた髪が肩に貼りついて、肌はもちもちしている。抱き寄せると腕のなかでぷるぷると小さく震えていて、これはやばい、と思った。可愛いだけの子だろうと高を括っていたのに、そこからベッドまでの持っていき方が妙に手慣れている。二十歳の顔と、指先の落ち着きが噛み合っていない。
ルックス ★★★★★
スタイル ★★★★☆
おっぱい ★★★★☆ Dカップ、手のひらに収まる範囲で形がいい
アソコ ★★★★☆
感度 ★★★★☆ 声を殺そうとして失敗するほう
性格 ★★★★★
120分という枠は、この手の遊びだと中だるみが出やすい。終盤で相手の集中が切れるのが分かってしまう夜も少なくない。彼女に関しては最後まで気配が緩まなかった。ねっとりと時間をかけるところと、こちらの反応を見て切り替えるところの落差で、飽きさせない作りになっている。うまい、というより、よく見ている。ただ、途中で一度だけ手順が先に立った瞬間があって、そこは覚えたものをなぞっているように見えた。
書き残しておきたい夜のこと
この先は限定エリアに
ここから先で何がどう転がったのかは、無料で読める側に置くには生々しすぎる。どこまで許されて、どこで彼女が線を引いたのか。日を改めてもう一度呼んだときに何が変わったのか。そのあたりは限定エリアのほうに記した。
料金の実際と、彼女を捕まえるのに要る段取りも、まとめてあちらに書いてある。
環状線の窓に映った顔
外はまだ明るくなかった。
部屋を出て、ホテルの階段を降りたら外はまだ蒸していた。西九条まで歩いて環状線に乗ったら、また窓に自分の顔が映る。行きに見たときより、いくらか緩んだ顔をしていた。京都に戻る前に、駅の立ち食いで冷たいそばを一杯だけ食べた。汁が濃くて、ああ大阪に来ていたんだなと今さら思ったな。
木屋町の奥に行けば似たような夜はいくらでも買える。それでも淀川を渡ってよかったと思える晩は、そう多くはない。