京都から湖西線で三十分
金曜の仕事帰り、三条で一杯だけ引っかけてから京都駅に戻った。京都は表と裏があって、表の顔で飲んだ晩ほど裏に足が向く。23時前の湖西線は空いていて、向かいの席の学生が鞄を落としかけたまま寝ていた。
大津京を過ぎると窓の外が真っ暗になる。琵琶湖は見えない。見えないのに、水のにおいだけは車内まで入ってくる気がしたな。
雄琴で降りてコンビニで水を買った。レジの兄ちゃんがやたら元気で、こっちの気分まで少し軽くなる。そういえば前回は車で来て、駐車場が狭いのに焦った覚えがある。雨が上がったばかりで、路面が街灯を返して光っていた。
向かった先は電車ごっこ。屋号がそのまま子どもの遊びの名前みたいでまぎらわしいが、雄琴に構える老舗のソープの店名である。毎時ゼロ分に案内が動く回転制で、時間の刻みがやけにきっちりしている。ここの作法を知らないと、受付の前で少し戸惑うことになる。京都から出てくると、この時間の律義さがかえって新鮮に映るのだから妙な話だ。
制服の子が、鏡ごしに笑った
指名したのはひまり。19歳、身長168、Eカップ。数字だけ並べれば細身の綺麗系で、実際そのとおりではある。ただ、ドアが開いてからの三十秒で、その印象は半分ほど崩された。
白い肌と、目の高さ
入ってきたのは制服姿だった。赤いチェックのスカートに黒のカーディガン、髪は真っ黒のロング。この店は指名の入れ方によって呼び名が変わる仕組みになっていて、その説明を受付で聞くところからもう遊びが始まっているようなものではある。
とにかく肌が白い。夏場でこれかと思うくらい白いのに、本人は「日焼けしちゃったんですよ」と言う。どこがですか、と返してしまった。目線がこちらより少し下にあって、そこから上目で覗いてくる癖がある。顔立ちは年齢より大人びているのに、笑うと一気に幼くなる。この振れ幅が効くわけだ。
指が触れてからの温度
手を引かれて洗い場へ向かう。触れた指先はひんやりしていて、二の腕から先はもちもちしている。密着してくるのが早い。こちらが体を流し始める前から背中に張りついてきて、鏡ごしに目が合うと笑う。
「鏡、ちゃんと見といてくださいね」
そう言われて素直に見てしまう自分がいた。木屋町の奥にある小さいバーで、隣に座った相手と距離を測っているときの感じに近い。泡を流すころには肌がぬるっと滑って、どこからが自分でどこからが向こうなのか分からなくなる。時間の取り方を間違えたな、と早々に後悔した。
惜しい。
採点はこうなった。
ルックス ★★★★★
スタイル ★★★★☆
おっぱい ★★★★☆
アソコ ★★★☆☆
感度 ★★★☆☆
性格 ★★★★★
スタイルは脱いだときのラインが一番わかりやすい。肩から腰までが素直に細く、そのわりに胸だけ主張がある。アソコを真ん中に置いたのは、締まりがどうという話ではなく、こっちが余裕をなくしていて判定どころではなかったからだ。性格は満点でいい。話すのも聞くのも好きだと本人が言うだけあって、沈黙が一度も来なかった。アニメの話になったら止まらなくなるあたりも含めて、話し相手として気持ちがいい。おっぱいを星四つにしたのは、形が良すぎて逆に手を置く場所に迷ったからで、減点というより言い訳に近い。
この続きは限定に置いておく
中身を全部ここに並べてしまうと、限定側に置く意味がなくなる。だから輪郭だけ書いておく。洗い場からベッドまで間が空かない。会話も途切れない。こちらの要望を先に聞く姿勢があって、聞いたうえで自分の好きな形に持っていく。押しつけがましさはないのに、主導権はいつのまにか向こうにある。
物足りなかった点を一つ挙げるなら、力加減が終始やさしいほうへ寄っていたことか。強く求めたい人には少し薄いかもしれない。もっともこれは好みの問題で、こちらは何も困らなかった。
何を頼んで何がどこまで通ったか、時間の使い方、それから終わったあとの長い雑談のことは限定エリアに書いた。指名するときのコツもそちらに置いてある。
ドアが閉まってからの十五分
駅前まで歩いた。空気がまだ湿っていて、シャツが背中に張りつく。
名刺の裏に手書きのひと言が入っていて、信号待ちでそれを読んだ。まじで、こういうのに弱い。
京都に戻る電車の中で、次はいつ空いているかを調べている自分がいた。祇園の雰囲気で飲むのも悪くはないが、今はこっちの湖のほうが気になっている。ラーメンでも食って帰るかと考えたものの、そういう気分でもなかったな。窓に映る自分の顔が、行きよりだいぶ緩んでいた。