ふらっと — 三日前の電話だけで粋美へ
十一月の終わり、その日いちばんの冷え込みだった月曜。仕事が思ったより早く終わったので、そのまま上野に出てみた。三日前に電話で枠だけ押さえていて、あとは当日どうにでもなるくらいの気持ちだったかな。
電話で希望を伝えたら、それならこの二人かなという感じで候補を出してくれた。悩む時間が短いのはありがたい。スレンダーなほうの名前を言って、それで終わり。
ちなみにこの日、夕方に散髪の予約を入れていたのを完全に忘れていて、店の前で謝りの電話をかけるところから始まった。あと、その週におろした靴が微妙に合っていなくて、上野を歩いている時点でもう左のかかとが痛い。出だしはあまり良くない。
粋美を選んだ理由は特にない。この日たまたま空いてたから、というだけだ。ただ、高級店のわりに電話の対応が構えていないのは前から知っていて、そこは信用していた。値段の高い店ほど電話口が偉そうになることがあるけど、ここはそれがない。
あと、こういう日はだいたい何も期待していない。期待していない日のほうが良かったりするから、それでいい。
ももぴの第一印象
送迎車と待合室
送迎車は上野で拾ってもらえた。歩かなくていいのは楽なんだけど、車内の暖房が効きすぎていて、乗ってから五分で上着を脱ぐことになった。冬にコート着たまま乗ると軽く汗をかくと思う。
店に着くと待合室でドリンクが出てきて、十分ほどで案内。この十分がちょうどいい。三十分待たされると気分が萎むし、着いてすぐ呼ばれると心の準備が間に合わない。
待合室は落ち着いていて、他の客とも視線が合わない配置になっていた。この手の気の使い方は、実際に座ってみないとわからない部分だと思う。
階段を上がるまでに思ったこと
出てきたのは黒髪のまっすぐな子で、写真とほぼ同じだった。まじか、と思った。この手の店で写真通りに出てくることのほうが珍しい。
色白で、腕も脚も細い。細いんだけど骨っぽくはなくて、手をつないだときの手のひらがやわらかい。二十歳と聞いていたけど、そう言われなければ大学生くらいかなと思うくらいの雰囲気だった。声が少し高くて、笑うと目が細くなる。
手をつないだまま階段を上がっていく。段のきしむ音と、前を歩く背中と、さらっと流れる髪。この時間がいちばん記憶に残るタイプの店だと思う。
途中で一度だけ振り返って、目が合って笑われた。この時点でもう完全に負けている。
入口だけ書いておく
部屋は思ったより広くて、ベッドと風呂場の距離が近い。物が少ないぶん掃除が行き届いていて、においも気にならなかった。高級店を名乗るならこのくらいは当然なんだけど、当然のことができていない店もあるので一応書いておく。
部屋に入ってちゃんと挨拶があって、そこから少し雑談。緊張しているのかと思ったら、そうでもなかった。学校の話とか、寒くなってきましたねとか、その程度のことを普通に話す。この普通さが意外と貴重だと思う。服はほぼ全部あちらが脱がせてくれる流れで、こっちは立っているだけでいい。
正直に書くと、手つきに新人らしさは残っている。ボタンを外す指が一回止まったし、脱がせる順番も少し迷っていた。ただ、それが嫌だったかというと逆で、慣れきった手つきよりよっぽど良かった。
「私から先にしてもいいですか」と聞かれたので、そのままお願いした。ちゅぱ、という音が思ったより早く部屋に響いて、そこで完全に力が抜けた。ここまでが入口。
あとで思い返すと、この一連の流れで一度もこちらが判断を求められていない。何がしたいですかとも、どうしますかとも聞かれなかった。それでいて押し付けがましさもない。二十歳でこれができるのは、たぶん性格のほうだと思う。
この続きは限定公開のほうに全部書いた。
また行くか、と聞かれたら行く。テクニックがどうという話ではなくて、間の取り方と気遣いのほうが良かったからだ。休憩中の雑談も含めて、時間の使い方に無駄がない。店が勧めてくるのもわかる。まあ悪くなかった、では済まない当たりだったと思う。帰りは送迎で駅まで戻って、かかとの痛い靴で家まで歩いた。