石巻まで、下道で二時間
盛岡から石巻まで、高速を使えば二時間かからない。ただその日はなんとなく急ぐ気になれなくて、下道を選んだ。八月の夜で、窓を全開にしても車の中は暑い。
途中のコンビニで缶コーヒーを一本だけ買って、駐車場で十分くらい何もせずに座っていた。石巻に入ったのは二十一時過ぎ。夜になると人通りが少なくて、広い道に信号だけが律儀に赤を灯している。
そういえば、この店の名前を最初に見たときは正直ちょっと笑った。看板で気取らないのは東北の人らしいというか、こういう身も蓋もない屋号の店ほど、中身は妙に真面目だったりする。
指名したのは、まきさんという人。四十五。プロフィールの写真は顔を伏せてあったが、ベッドの上で背筋を伸ばして座っている一枚があって、それだけで決めたようなものだったな。
電話で予約を入れたときの受付も、変に慣れ慣れしくなくて良かった。こちらが土地勘のない人間だと分かると、ホテルの入り口の目印まで説明してくれる。東北の人は初対面で距離を詰めてこないぶん、こういうところに親切さが出る。
ドアが開いた三秒
最初に目に入ったもの
ノックの音が小さかった。開けたら、ベージュのブラウスにくすんだピンクのロングスカート、髪は黒に近い茶で肩より下。プロフィールの人がそのまま立っていた。パネマジという言葉を使う場面がなかった、と言えば伝わるだろうか。
「こんばんは、まきです。道、混んでませんでした?」
声が思ったより低くて、話す速度がゆっくりだった。四十五という数字を先に知っていたぶん、こちらは少し身構えていたんだが、玄関で靴を揃えるあたりの所作を見ているうちに、その身構えが勝手にほどけていった。
155cmでDカップ。数字だけならどこにでもいる。ただ着痩せするタイプで、脱いだあとに印象が変わる人だった。
手のひらの温度
まずベッドの端に並んで座って、少し話した。手を握ったとき指先が冷たかったらしく、「クーラー効きすぎじゃないですか」と笑われた。設定が十九度になっていて、こっちが焦ってリモコンを探した。自分の話より先に相手の寒さを気にする人なんだな、と思った。
色白で、腕の内側なんかは触るとひやりとするくらい滑らかだった。ドキドキするというより、じわじわ体温が移ってくる感じ。この歳になると、こっちのほうが効く。
灯りを落としてから
シャワーは一緒に入った。背中を流してくれるとき、ボディソープでぬるぬるにした手のひらを首筋から肩甲骨まで滑らせてくる。慣れてるな、と思った。事務的という意味じゃない。どこを触られたら人の力が抜けるかを分かっているという意味。
部屋に戻って灯りを落としてからは、ずっと密着している時間が長かった。店のアピール文には痴女系と書いてあったから、もっとぐいぐい来るのかと思っていたら実際は逆で、こちらが動かなくなるまで待つタイプ。耳の後ろから首、鎖骨と順番に降りてきて、その間ずっと片手が背中に置かれている。
ゾクゾクした。
途中で一度だけ体勢を変えるとき、ベッドが思いきり軋んで、二人で同時に固まった。そのあと目が合って、どちらからともなく笑ってしまった。こういう間の抜けた瞬間を気まずくしないでいてくれる人は、それだけで信用できる。
反応もよく出る人で、こちらが触ると息の乱れ方で分かる。演技かどうかは正直判別できないが、判別できないくらいには自然だった。まじで、四十五という数字は関係ないなと思った瞬間が何度かあった。
途中で「そんなに見ないでください」と顔を隠されて、そこだけ急に歳相応の照れ方をするのが良かった。こういう緩急は若い子だと出せない。温かい対応で、しかも上手に照れる。ずるいと思う。
不満を挙げるなら二つある。ひとつは部屋が狭かったこと。これは店のせいではなく、自分が安いほうのホテルを選んだせいだ。もうひとつは、テクニックそのものが飛び抜けているわけではないこと。力加減は丁寧なんだが、手数で攻めてくるタイプではない。そこを求める人は別の子を選んだほうがいい。
ルックス ★★★★☆
スタイル ★★★★☆
おっぱい ★★★☆☆
アソコ ★★★☆☆
感度 ★★★★☆
性格 ★★★★★
この子の人柄が全部だったな、という点数の付き方をした。数字を眺めると平凡に見えるが、実際に会うと順位が入れ替わる種類の人だ。
バイパスを戻りながら
終わってからも五分くらい普通に話した。石巻のラーメン屋の話になって、「朝までやってるところがありますよ」と教えてもらった。
結局そこには寄らず、帰りは道に迷って一本違うバイパスに乗ってしまい、盛岡に着いたのは空が白む頃。眠かったが、機嫌は悪くなかったな。
温かい対応で終わる夜は、払った金額より後に残る。行ってよかった。
この日の部屋の中身と、料金や予約のことは限定エリアに書いた。