八月の盛岡、生ぬるい風の中で
八月最後の金曜。
仕事を三十分だけ早く切り上げて、盛岡駅に降りた。半年ぶりだ。
盆を過ぎたというのに空気はまだ生ぬるくて、開運橋のあたりを歩いているだけで背中に汗がにじんだ。暑い。北の街だから涼しいだろう、というのは他所の人の勝手な思い込みで、こっちの夏はこっちの夏でしっかり蒸す。
LOVE ROSE ラブローズ 盛岡は、駅から歩ける範囲のホテルに呼べるデリヘルだ。
19時すぎに部屋へ入って荷物を置いた頃、店から確認の連絡が来た。落ち着いた声で部屋番号と時間を復唱して、こちらが言い淀んだところは急かさずに黙って待ってくれる。温かい対応で、初めて使う店にありがちな身構えのほうが先にほどけていった。東北の人は、こういう間の取り方がうまいと思う。数をこなしているというより、単にそういう気質なのだろう。
指名はプロフィールの写真から選ぶ形。オプションは電マが無料で、コスプレや顔を写さない撮影は追加になる。それ以外も相談は受けてくれるらしい。
待つ場所はこちらのホテルなので、待合いも順番待ちもない。着いてから終わるまでの時間を丸ごと使えるのが、この形のいいところだったな。入室してからの案内も短く、余計な手順を挟まれなかった。
唄稀と過ごした最初の三十分
目に飛び込んできたもの
ノックの音。
ドアの隙間から先に見えたのは、艶のある黒髪だった。
前髪をまっすぐに切りそろえたボブ。青みがかったレンズの入った目が、下からこちらを見上げてくる。156cmだから、自然とそういう角度になる。色白というより、光を通しそうな白さだった。
写真は加工が強めだったので少し身構えていたのだが、実物のほうが線が細くて、こっちのほうがいいじゃないか、と思ったな。
ワンピースの上に薄手の羽織りを重ねていて、部屋の空調が効きすぎていたせいか、しばらく脱ごうとしなかった。冷房が寒いという話でひとしきり盛り上がる。こっちは汗だくで来ているのに、正反対だ。
ルックス ★★★★★
スタイル ★★★★☆
おっぱい ★★★☆☆
アソコ ★★★★☆
感度 ★★★★☆
性格 ★★★★☆
触れてわかった体温
「ウキウキうきちゃんで覚えてくださいね」
名乗り方がそれで、思わず笑ってしまった。まじで二回言われた。
握り返してきた手はひんやりしていたのに、腕の内側だけはもちもちしていて温かい。二十二歳の肌というのはこういう感触だったか、と余計なことを考えた。
肩に手を置いたとき、少しだけ体が跳ねた。驚かせたかと謝ったら、首を横に振って「くすぐったいだけです」と笑う。
身長が156cmしかないので、並んで座ると肩の位置がずいぶん下にある。抱き寄せると、こちらの胸のあたりに頭が収まった。
ただ、この日はどこか本調子ではなかった。
前の日に階段でコケたらしくて、テンションが明らかに低め。声が小さくて、二回ほど聞き返してしまった場面もある。体調でムラが出る子なのだろうと思う。写真の中の子はいつでも同じ顔をしているが、実物にはその日の調子がそのまま出る。
それでも、笑うポイントが素直で、飼っているハムスターの話になった途端に前のめりになった。回し車の音がうるさくて眠れない、という愚痴を真剣な顔でされる。
この子の人柄が出るのは、むしろこういう整っていない日のほうなのかもしれない。会話を大事にしたい側からすると、元気を演じられるよりずっとよかった。
盛岡に来る用事のついでではなく、この子のために来た日だと言ったら、少し黙ってから「うれしい」とだけ返ってきた。その間の取り方も含めて、悪くない子だと思う。
ドアが閉まったあとの部屋
書ききらずに残しておくこと
ここから先、部屋の中で何がどんな順番で進んだのかは、限定エリアのほうに置いておく。
ひとつだけ先に言っておくと、口を使うときのこの子の集中の仕方は、こちらが想定していた線を軽く越えていった。低かったはずのテンションが、そこだけ別人みたいに切り替わる。どういう形だったかは、続きで。
帰りは徒歩でホテルを出て、まだ開いていたラーメン屋に寄った。汗をかいた後に熱いスープは正直きつかったのだが、なんとなく寄って帰りたくなる夜だった。カウンターが狭くて、隣の客と肘がぶつかったのだけは参ったが。
そういえば、部屋を出るときに「気をつけて帰ってね」と言われたのが、やけに長く耳に残っている。営業でそう言う子はいくらでもいるが、この子のそれは言い方が違ったな。
盛岡まで足を運んでよかった、と素直に思える夜だった。ここ何年か、当たりの日ほど帰り道が短く感じる。