夜の始まり
3月の水曜、仕事終わりの鶯谷。駅の改札を出ると、ラブホの看板が濡れた路面に反射していた。雨上がりの空気がほんの少し冷たい。
新人のパネルを見たとき、なんとなく妖艶な感じがした。言葉にしにくい。整いすぎていない、でも目を離せない顔。電話を入れると空いていた。
ドアが開く。大人な雰囲気の女性。おしとやかで、タレ目がちのきれい系。165くらいのスレンダーな体型で、肌が驚くほど白い。雪国育ちと聞いて、なるほどと思った。ももクロの玉井詩織に似ている——と言って伝わるかどうか分からないが、あのタレ目の柔らかい印象。
「はじめまして。仲良くしてくれたらうれしいです」
丁寧な言葉遣い。でも、動作にはどこか手慣れたものがあった。シャワーの準備をスマートに整えていく手つき。この子は見た目ほど初々しくない——そう直感した。シャワーに入ると密着洗体が始まる。やわやわとした身体の使い方に、こちらの身体が先に反応してしまう。まだ何も始まっていないのに。
ふたりの時間
ベッドに戻ってからの引き出しが、すさまじかった。
最初に手が伸びたのは玉袋。マッサージ。付け根をチロチロと舌先で舐める。ぞくっ、と背筋に電気が走った。「玉袋が大好きなんです。ずっと触っていたくなる」と、少し恥ずかしそうに言った。嘘だ。恥ずかしさなんて微塵もない手つきだった。
袋を軽く揉みながらじゅるっとフェラに移行する。ここが圧巻。根元にかかる圧と、舌先の繊細さが同居している。タレ目の瞳がこちらを見上げて、ゆっくり上下する。「気持ちいい?」と確認するような声。近年稀に見るテクニシャン——この時点で確信した。
ただ、ひとつだけ。もう少し深く咥えてほしかった。浅めのストロークに舌技を重ねるスタイルで、それ自体は悪くない。でも、あの技術力があるなら深さも欲しくなる。高望みなのは分かっている。
受け身に切り替える。スローに舐めるのが気持ちいいとのことで、ゆっくり合わせると声が変わった。身体も、ぴくっと正直に反応する。Dカップの胸を舌先で転がすと、「んっ……」と小さく漏れた声。白い肌だから紅潮が手に取るように分かる。首筋から胸元にかけて、じわっと赤みが広がっていった。
体験の断片
中が一番気持ちいい、と彼女は言った。
正常位でゆっくり入ると、すぐに分かった。タイトだ。ただタイトなだけじゃない。しばらく前後していると、ぎゅっ、と握られる感覚。顔を見ると、ふふっとイタズラっぽい笑み。「締めるの、得意なの」。卍力、という言葉が頭をよぎった。大げさじゃない。かなりのもの。
速度を上げる。「あっ……んっ……」と声が大きくなって、タレ目の瞳が潤んでいく。おしとやかな仮面が、音を立てて剥がれていくのが見えた。本気モードに入った彼女は、さっきまでの丁寧な子とは別人。腰が自然と押し返してくる。呼吸が荒い。汗ばんだ白い肌に、間接照明のオレンジがにじんでいた。
お互いに限界だった。声が重なった瞬間、時計の音も街の雑音も、何も聞こえなくなった。
別れ際
タオルを渡してくれる手つきが、またスマートだった。
「どうでした?」と聞かれて、少し考えてから「参った」と答えた。彼女は照れたように笑って、それからまた丁寧に着替え始めた。あのプレイ中の顔とこの穏やかな横顔が、同じ人間のものとは思えない。
帰り道。雨は上がっていたけれど、空気はまだ湿っていた。ラブホの看板が、行きとは違う色に見えた。大人しそうな見た目の裏にある確かな技術。玉袋への偏愛。本気になったときの表情。あの60分は、もう取り戻せない。
彼女の名前とお店、会える場所は有料エリアに記しておく。
帰りにラーメン食いたくなった。腹減った。