土曜の午前、通町筋の電停で降りてアーケードに入った。外は朝から霧雨で、傘を差すほどでもなく差さんと濡れる、あの中途半端なやつ。熊本んもんは雨の日ほど上通りから下通りへ屋根の下を歩くけん、この日も人は多かった。
下通りば流しよって、足が止まった土曜
中央街の交差点を渡って一本入ったところに、エトワールの看板はある。ネオンで殴ってくるタイプやなくて、探しよらんかったら普通に通り過ぎてしまう佇まいだった。徒歩でしか来られん場所ではなかばってん、この辺で駐車場を探す時間があるなら電停から歩いたほうが早か。
受付は入ってすぐ左の小さいカウンター。スタッフの兄さんが顔を上げて先に挨拶ばしてくれて、聞かれたのは名前と、指名かフリーかの二つだけだった。写真を見ながら決める形になっとって、こっちが名前を出すとその場で出勤と空き枠を確認してくれる。手際は熊本のこの手の店の中でもかなり良かほうだと思う。初めてでも迷う場面はほとんどなくて、写真を見て名前を言うだけで案内まで一直線に進む。値段の説明も先に紙で出してくれたけん、後から積み上がる不安がなかった。
待合はぶっちゃけ狭い。
ソファが二つとテレビが一台、雑誌が数冊。先客が一人おって、二人で高校野球ば黙って眺めとった。あの数分の気まずさだけは、何回来ても慣れんばい。
総額は二万円から三万一千円くらいの幅で、あとはコースの長さ次第。
下通りでよく見る店たい。特別に安いわけでも高いわけでもなか。
名前を呼ばれた。
階段を上がる。五分ちょっとしか待っとらんはずなのに、この階段だけはまじで長く感じるとたい。
扉が開いて、あみと向き合う
最初に目に入ってきたもの
ドアが開いて飛び込んできたのは笑顔だった。清楚系という肩書きが付いとったけん、俯きがちで声の小さい子を勝手に想像しとったのに、まっすぐこっちを見て笑う。二十三歳、黒髪は肩より少し下。T161という数字のとおり、並ぶと目線がちょうどよか高さにくる。
とにかく肌が白か。
そこは反則たい。
部屋の照明は絞ってあるのに、それでも白さだけが浮いて見えるくらいだった。写真より実物のほうが良か、というのは滅多に書かんことばってん、この日はそう書いておく。爪は短く整えてあって、色は塗っとらん。派手さで勝負しに来とらん子だという印象が、この時点でだいたい固まった。
手のひらに残った感触
手を取られて中に入る。指先が冷たくて、外を歩いてきたこっちの手のほうがよっぽど熱かった。八月末の熊本は午前でも蒸すけん、シャツの背中は既に汗ばんどる。それを気にしよったら、先にシャワー行きましょうかと向こうから言ってくれた。
腕を流されとる間、肩に髪が当たる。もちもちした二の腕が背中に触れて、そこでやっと肩の力が抜けた。湯の温度も勝手に決めんで、熱かったら言うてくださいねと二回確認された。細かかところに気が回る。
手の動かし方は、正直まだ荒削りなところもある。力加減が一定で、強弱を付けるところまではいっとらん。ばってん、それを補って余りあるくらい距離の詰め方が上手かった。
六つの物差しで点ば付けとく
ルックス ★★★★★
スタイル ★★★★☆
おっぱい ★★★☆☆
アソコ ★★★★☆
感度 ★★★★☆
性格 ★★★★★
おっぱいは八十七のCで、大きさで押してくるタイプではなか。形はきれいやったばってん、そこを狙って指名する子ではなかろう。感度のほうは途中から声の出方が変わって、分かりやすかった。性格に満点を付けたのは、後述の理由がでかい。
この先はいつもどおり限定エリアに置いとく
流れそのものは全部限定エリアのほうに書いた。ここには、部屋を出るまでで一番残ったことだけ残しておく。
途中で一度、手が止まる時間があった。こっちが昔の話ばぽろっとこぼしたら、あみは急かさずに最後まで聞いた。そのあとで「よう頑張ったですね」と言われて、返事に詰まった。慰められるつもりで来とらんかったけん、余計に効いた。
そういえば熊本地震の話にもなった。あのとき何しとったか、家がどうだったか。プレイの最中に揺れたらどうするんですかね、という笑い話にまでなって、二人で天井を見上げた。あの数分間だけは店の部屋やなかった。九年前のあの春に自分がどこにおったか、水がどれだけ出んかったか、給水の列で何時間並んだか。そういう話を若い子にすると気を遣わせるけん普段は出さんとやけど、この子は相槌の間合いが上手くて、気が付いたら全部しゃべっとった。向こうも当時の話ばぽつぽつ返してくれて、変な言い方ばってん、同じ土地で同じ揺れを覚えとる人間同士の会話になっとった。
寄り添うという言葉は安っぽく響くばってん、この子のそれは覚えた技術やなくて素の速度に見えた。二十三でこれは、なかなかおらん。
終わりの時間が近づいて、着替えながら次の予定の話ばした。夕方から飯の約束があると言ったら、じゃあ胃を空けとかんといけませんねと笑われて、部屋を出る前にもう一回だけ抱きしめられた。ドアが閉まる音を聞いてから階段を降りるまでの十数秒が、この日いちばん静かだった。
帰りは同じアーケードを北へ。腹が減ったけん、下通りの外れでラーメンば一杯すすってから電停に向かった。替え玉はやめといた。
あの日どこまでいったか、指名を通すときのコツ、狙うべき時間帯。そのへんは投稿者限定のほうに全部書いとる。