神通川を渡って
金曜の仕事終わりに金沢を出て、北陸道を東へ走らせた。富山市に入った頃には十九時を回っていて、雨が細かく降っていたな。ワイパーの音だけがやたら耳についた。
駐車場を探すのに十分ほど無駄にした。
富山市は静かだ。
富山の夜は、片町の賑わいに慣れた目には静かに映る。駅前の通りは看板の数こそ多いが、人の流れが穏やかで、歩いていても肩がぶつからない。金沢とは似ているようで、街の音の密度が違うんだよな。
マダムバンクは富山市を拠点に動いているデリヘルで、人妻・熟女に寄せた編成の店だ。こちらはホテルを取って部屋で待つ形になる。今回押さえた部屋は正直狭いし、暖房の効きも鈍くて寒い。北陸の夜はこういう細かいところで体力を削ってくる。
指名はプロフィールの写真と数字を見て決める形。七十分のコースにした。時間の刻みが細かいのは、こちらの都合に合わせやすくて助かる。受付の対応も淡々としていて、オプションを延々と勧めてくるようなことがない。それだけで店への印象はだいぶ変わるものだ。
待っている間にコンビニで水を二本買ってきた。そういえば富山に来ると帰りに必ず同じ店でラーメンを食う。今日もそのつもりでいた。
まひるという人
目で追ったもの
ノックが二回。ドアを開けた先に立っていたのは、写真より線の細い人だった。161センチという数字は頭に入れていたが、靴を脱いでも目線がずいぶん近い。
「お久しぶりです」
不意打ちだった。
顔を見た瞬間にそう言われて、こちらが面食らった。前に指名したのは一年以上前で、それも一度きりだ。覚えているものかねと聞き返したら、少し困ったように笑っていた。この一言で、その日の空気はもう決まってしまったようなものだったな。
静かな人だ。声は小さめで、しゃべり方に押し出しがまるでない。三十一歳という年齢の割に擦れたところがなく、素朴という言葉がこれほど似合う人も珍しい。前に会ったときより明らかに細くなっていて、そこを指摘すると「ちょっと痩せちゃって」と気にしている風だった。
ルックス ★★★★☆
スタイル ★★★★☆
おっぱい ★★★☆☆
アソコ ★★★☆☆
感度 ★★★★☆
性格 ★★★★★
胸は控えめだが、本人がそれを隠そうとしないのが良い。盛って見せようとする相手が多い中で、この人はそういう小細工をしない。
髪は黒いまま。染めた形跡がなく、毛先まで揃っている。服も飾り気のないニットのワンピースで、部屋に入ってきたときの印象だけなら、これから仕事の打ち合わせでも始まるのかという静けさだった。三十一歳という数字は、顔の作りよりこういうところに出るんだろうな。派手さで押してくる相手が悪いとは言わないが、この静けさは金沢でもそう当たらない。
指先が覚えたこと
肩に手を置いたときの体温の低さに驚いた。北陸の冬を歩いてきた手はどこも冷たくて、こちらの掌のほうが熱いくらいだったな。
細い。腕も背中も、指の下に骨の形がはっきり伝わってくる。ただ肌そのものは驚くほど柔らかくて、触れているうちに少しずつ温度が上がってくるのが分かる。
骨っぽいのに、冷たくはない。
触れられ方への反応が、想像していたよりずっと素直だった。息の詰まり方、肩の跳ね方。言葉より先に体のほうが返事をしてくる相手がいるが、この人はまさにそれだ。まじでこういうのは久しぶりだった。
そこから先の流れは、ここには書かない。
言葉にしていない部分
七十分は短いようで、この人と過ごすと妙に長く感じる。急かされないからだろう。北陸の夜はもともと時間の進み方が遅いが、その日の部屋の中はさらに輪をかけて緩やかだった。
終わってから、また来ますと言った。社交辞令ではなく本当にそう思っていた。
この店を最初に選んだのは、富山で人妻系を探していたときにたまたま目に留まった、という程度の理由でしかなかった。指名した相手のことも、正直なところ名前と背の高さくらいしか覚えていなかった。それが一年以上空けて戻ってきて、しかも向こうがこちらを覚えていた。そういう偶然みたいなものが一度でも重なると、店の良し悪しとはまったく別の場所に理由ができてしまう。また来ようと思う根拠なんて、だいたいそんな頼りないものかね。金沢の店に十回通っても一度も名前を呼ばれないことがある一方で、年に一度も来ない客の顔を覚えている人がこうしている。そこに理屈を探しても仕方がないのだろう。
ドアが閉まってから
雨は上がっていた。
ひとりになった部屋で、まだ少し温度の残ったシーツを見ていた。窓の外は雨が上がっていて、路面が街灯を返している。
結局その足でラーメンを食って金沢まで戻った。運転しながら考えていたのは、あの「お久しぶりです」の言い方のことばかりだったな。
部屋の中で何がどう進んだのか、この人がどこで一番反応したのか、そのあたりは投稿者限定エリアに書いた。料金の実額と、指名を取るときの時間帯の話もそちらに置いてある。