浜松まで来た理由
八月の水曜、仕事で浜松に呼ばれた。沼津から東名で二時間半、渋滞込みだともう少しかかる。日帰りで戻れなくもないけど、戻ったところで何もない。ホテルを一泊押さえて、夜をどうするか考えはじめたのが夕方だったな。
東部にいると、遊ぶかどうか迷うときはいつも東京まで出るか迷う距離感の話になる。新幹線で一時間ちょっと、でも往復で一万円が飛ぶ。その計算を毎回やっている自分に、そろそろ飽きていた。
浜松は逆だ。東京のことを一切考えなくていい。
車を停めた駐車場のそばにコンビニがあって、そこでアイスコーヒーを買いながら店の並びを眺めた。人妻系がやたら多い土地なんだな、というのが最初の印象。その中で浜松人妻マル秘倶楽部という店を開いたら、枠がほとんど埋まりきっている子が一人いた。それがひめかだった。
三十三歳、T155のIカップ。数字だけ見ると「どうせ盛ってるやつだろ」と身構える。ぶっちゃけ半分は疑っていた。空きが一枠だけ残っていたので、疑ったまま電話を入れた。
受付の人が丁寧で、待ち合わせの説明を二回繰り返してくれた。こちらが土地勘のない人間だと分かったんだろうな。ホテルの名前を伝えたら、そこなら何度も行っているので大丈夫です、と即答された。こういう返しが早い店は、だいたい現場も回っている。
ドアを開けた三十秒
白いブラウスの向こう側
ホテルの部屋は正直狭い。ビジネスホテルだから仕方ないんだけど、ベッドの脇を通るのに横向きにならないといけない。エアコンを最強にして待っていた。八月の浜松は暑い。
ノックが二回。開けたら、白いブラウスの女の子が「こんばんは、ひめかです」と先に名乗った。写真より輪郭がやわらかい。
目が合った瞬間に笑うタイプで、こっちが緊張を作る隙がなかった。
数字を疑っていたことは三十秒で後悔した。まじでIカップなんだな、と口に出しかけて飲み込んだくらいには、ブラウスの前がどうやっても閉まりきっていない。本人は慣れているのか、そこを見られても一切動じないんだよな。
触れる前と、触れたあと
シャワーの前に少し話した。浜松の話、沼津から来た話、そういえば来る途中で入ったラーメン屋が思ったより当たりだった話。相槌が上手くて、二十分くらい平気で溶ける。
肩に手を置いたときの体温が高くて、少し驚いた。腕から肩にかけての質感がもちもちしていて、細い子とはまるで違う手触りだった。
抱き寄せると、こっちの胸に全部乗ってくる。むちむち、なんて言葉を使うのが恥ずかしいくらい、そのままだった。
「重くないですか」と笑うので、重いに決まってるだろ、と返したら余計に笑っていた。三十三歳という年齢のわりに、笑い方がやたら若い。年上に甘えたい人にも、年下扱いしたい人にも、たぶんどっちにも刺さる。
数字を並べるのは野暮だと思っているんだけど、自分用のメモとして残しておく。
ルックス ★★★★☆
スタイル ★★★★★
おっぱい ★★★★★
アソコ ★★★★☆
感度 ★★★★★
性格 ★★★★★
書けるのはここまで
このあとの流れを全部ここに書くのは、たぶん違うんだと思う。
一つだけ言っておくと、この子は受けているようでいて、途中から静かに主導権を持っていく。こっちが攻めるつもりで組み立てた順番が、三手目くらいで崩れた。ビクビク反応する姿を眺めていたはずが、いつのまにか眺められる側に回っている。
力加減がずっと一定なのは少し気になった。もっと強くていい場面でも同じ強さで続くので、そこだけ自分から言葉にする必要があった。言えばすぐ変わる。
個人的に頼めるオプションが別枠であって、それを入室のときに聞かれた瞬間、この店の作りが少し分かった気がした。何がどこまで通るのかという話は、この先の限定エリアに置いておく。
終わったあと、帰りの道順を心配された。「東名、この時間そんなに混まないですよ」と言われて、ああ地元の子だな、と思った。
東名を戻りながら
見送ってからしばらく、部屋の椅子に座ったまま何もしていなかった。テレビもつけず、エアコンの音だけ聞いていた。
浜松という街をそれまで通過するだけの場所だと思っていて、実際、東名を走っていると標識としてしか目に入らない。そういう扱いをしていた土地に、わざわざ戻る理由ができてしまったのが厄介だった。
翌朝チェックアウトして東名に乗ったら、焼津のあたりで雨。ワイパーの音を聞きながら、また浜松に呼ばれないかな、と考えている自分に少し焦った。仕事の出張先を遊びの都合で選びはじめたら終わりだろ、と思う。
沼津にしてはアタリ、という言い方を自分はよくするんだけど、今回は浜松なので使えない。使えないのがちょっと悔しい、って感じかな。
名前も店も上に書いてある。書いていないのは、あの八十分の中身のほうだ。そっちは限定エリアに置いた。